21世紀COEプログラムによる活動記録

2004年度 第6回研究会

日時: 2004年2月25日
場所: 同志社大学 今出川キャンパス 扶桑館
タイトル: ソロモン・シンメル教授(ヘブライ・カレッジ)講演会
"Developing an Internet-Based Trialogue on Peace and Reconciliation in Judaic, Christian and Islamic Thought"
講師: ソロモン・シンメル Solomon Schimmel (ヘブライ・カレッジ)
要旨:
ソロモン・シンメル博士はボストン・ヘブライ・カレッジのユダヤ教教育および心理学の教授であり、Wounds Not Healed by Time: The Power of Repentance and Forgiveness(2002年)、The Seven Deadly Sins: Jewish, Christian and Classical Reflection on Human Psychology(1997年)の著者である。またユダヤ学、宗教心理学、比較宗教倫理学に及ぶ多くの論稿も出版している。同博士は2005年1月から2月末まで同志社大学の訪問教授として招聘を受け、2月25日一神教学際研究センター(CISMOR)において講演を行なった。下記はその要旨である。
講演は3つの部分から成る。

 

  • インターネットを通じて、宗教間の理解と和解に関するユダヤ教・キリスト教・イスラームの三宗教間対話を促進させようという提言。
  • ユダヤ教・イスラームの宗教思想における悔い改め(teshuva/tawba)の価値観。これは三宗教間対話において議論可能な概念の例証となる。
  • ヘブライ・カレッジにおいてシンメル博士がインターネット上の講義で使用する教育ソフトウェアプログラムの実例。これは三宗教間対話を促進させるために応用可能な実例である。オンライン・コースの中から同博士が教えるユダヤ教倫理に関する部分の例示。

インターネット上では、さまざまに異なる国・文化・宗教社会から人々が集まり、共に教え学び合うという経験の共有ができる。三宗教の聖典本文、聖典以後の宗教的文献が、音声や図形や映像と共に使用できる。三宗教間対話への参加者たちは世界中の宗教学者や聖職者、そして紛争解決の専門家たちと交流し、三宗教における一神教的信仰や価値観についてよりよい理解に達することができる。シンメル博士は、三宗教間対話の中心的教育目標はそれぞれの根本的・特殊的宗教にコミットする忠実な信徒たちの間で宗教的本文が学び合われ、寛容・慈愛・和解の心が育まれていくことだと強調する。同博士は人々が自分自身の宗教伝統のみならず、それとは異なる他人の宗教伝統をも省みることができれば、それが十分な成果なのだと考えている。つまり、それぞれの信仰に基本的で実存的な核には疑念を抱くことなく、自分自身の信じる宗教の教えや理解の中にも修正すべき道徳的・倫理的欠陥があると認識するようになればよいというのである。シンメル博士はこれまで8年間ヘブライ・カレッジにおいてインターネットによるコースで教鞭をとり成功を収めている。同コースのオンライン受講者には修士号(ユダヤ学)の取得が可能である。
(COE研究指導員 長谷川(間瀬)恵美)

『2004年度 研究成果報告書』p.300-301より抜粋