21世紀COEプログラムによる活動記録

2006年度 第1回研究会

  • 060513a
  • 060513b
日時: 2006年5月13日(土) 14:00-18:00
場所: 同志社大学 東京オフィス
タイトル: Interfaith Dialogue from Perspective of History of Islamic Civilization
講師: オスマン・バカル(マレーシア国際イスラーム大学教授)
要旨:
2005年、国連のアナン事務総長より「文明間の連合」(“Alliance of Civilization”)の提起があったが、イランのハターミー大統領によって提起された「文明間対話」、および宗教間対話は、現代世界の諸問題解決のためにも依然として極めて重要である。
イスラーム文明は預言者ムハンマドのマディーナ移住によるその成立以来、宗教間対話の非常に豊かな伝統をもっている。預言者自身による他宗教との対話の先例もあり、中国、スペイン、中央アジアなどにける宗教間対話の実践は、王岱?、イブン・アラービーらの著作のような大きな思想的、文化的成果へとつながっていった。マレーシアを含めた東南アジアでは、イスラーム(特にスーフィズム)とヒンドゥー、仏教の長い交流の経験がある。
イスラームが他宗教との対話を行ってきた動機は次の6つである。[1]イスラームが最後の啓示宗教であるとの自己理解、[2]クルアーンにある普遍的な啓示という概念、[3]クルアーンに基づく包括的な神学、[4]「啓典の民」であるか否かを判断する必要性、[5]イスラームが「文明の借用」に積極的であったこと、[6]イスラームの秩序における多元主義。
オスマン・バカル教授の発表に対し、手島勲矢氏(同志社大学大学院神学研究科教授)からは、マイモニデスら、イスラームの統治のもとで、亡命を余儀なくされた思想家について指摘があり、オスマン・バカル教授は、これに対して、対話が、紛争と同時にでも進行していたことを指摘した。また、手島氏はイスラームの包括性の範囲、一神教の範囲について質問したが、オスマン・バカル教授は、イスラームの包括性の範囲が多くの宗教を一神教とみなしうる、広範囲のものであることを指摘した。
川端隆史氏は、自身のマレーシアについての知見から、多民族の共存するマレーシアにおいては民族間、宗教間において、日常の中で対話が行われていることを指摘した。
(CISMOR奨励研究員・神学研究科博士後期課程 塩崎悠輝)