21世紀COEプログラムによる活動記録

2003年度 第2回研究会

日時: 2004年1月10日
場所: 同志社大学 今出川キャンパス 徳照館
タイトル: 国際テロとその対応
講師: 宮坂直史 (防衛大学校国際関係学科)
タイトル: 大量破壊兵器の拡散問題について
講師: 石川 卓 (東洋英和女学院大学国際社会学部)
要旨:

 今回まず『国際テロリズムとその対策』と題して、防衛大学校の宮坂直史氏が講演した。氏は最近のテロの動向に触れ、アルカイダやジェマ・イスラミヤの変化を分析し、テロ組織が実態を掴みにくくなっていること、更に、広報宣伝活動が極めて巧みになって来ており、これがテロリストたちを背後で支援していると指摘した。次に国際的なテロ対策の流れについて触れ、1990年代以降、国連を中心に主要国サミットにも、テロに対策の論議が積み上げられてきていること、近年のアメリカの動向については、イラク戦争は、元来大量破壊兵器の不拡散が主眼とされていたが、結果から見ると微妙であることを述べた。

  今後の展望は、レトリックとしての対テロ戦争と、実質的な対イスラーム過激派戦争とを分別する視点も重要だと述べ、反テロ・パブリシティの下手さによる反米意識の高まりがあり、アメリカ自体も苦慮しているが、奏効していないのが実状であると述べた。

  続いて、『大量破壊兵器の拡散問題について』東洋英和女学院大学の石川 卓氏が講演した。1990年代から不拡散政策というものが、大きく変容してきている。特にアメリカでは、ブッシュ父政権期から拡散対抗イニチアシブが積極的に強化されるようになった。クリントン政権では、多国間枠組みの中で、拡散の違法性を明確化する枠組みが造られた。

  ブッシュ政権は単独行動主義ということが誇張されて喧伝されているが、実際的にはクリントン期に始まっていたもので、ブッシュ政権とクリントン政権は連続的に捕らえるべきであり、先制攻撃ドクトリンもクリントンからの系譜に位置づけられると指摘した。

  ブッシュ政権では、9・11以後、不拡散の問題と反テロ対策とが次第に重なり合うようになってきている。イラク戦争そのものも、不拡散政策の一貫と見ることも出来る。リビアが査察受け容れに動いたのは、抑止効果があったと見るべきであろう。拡散安全保障イニチアシブは強まっており、従来の枠組みを踏み出そうとしているようであると述べた。

  中西 寛氏は、アメリカの世界像が見えないこと、テロ対策の国防視点の重要性、また不拡散の枠組みと共に、大量破壊兵器を持ちたがる国の動機分析の必要性を述べた。

  松永泰行氏はイラン研究者として、「テロ」という言葉がレッテル貼りに堕ち、実態を見えにくくしていると指摘し、個別具体的な分析の重要性と、イラン政府の立場を提示して、その立場としての合理性を述べた。

  ディスカッションでは「テロリズム」という抽象概念の必要性、イスラエルとイランとの立場の違いなど、詳細な論議が展開された。最後は、このようなアメリカや世界情勢に対して、日本はどのような在り方をすべなのかを、構想し、提言すべきだと総括された。
(CISMORリサーチアシスタント・神学研究科後期課程 藤林イザヤ)