21世紀COEプログラムによる活動記録

2003年度 第3回研究会

日時: 2004年3月6日
場所: 同志社大学 東京アカデミー
タイトル: アメリカの中東政策
講師: 内田優香 (民主党政策調査会)
タイトル: 米国の政策コミュニティ
講師: 伊奈久喜 (日本経済新聞)
要旨:

  去る3月6日(土)同志社東京アカデミーにおいて、CISMOR主催、第3回「アメリカ・グローバル戦略と一神教世界」の研究部会が開催された。同志社大学法学部助教授村田晃嗣氏の司会の下、二人の方が発題し、コメントがなされ活発な論議が繰り広げられた。

  最初の発題者は民主党の内田優香氏。『米国の対中東政策』と題して、米国ジョン・ホプキンス大学留学時に研究なさったことを踏まえ、二度に渡る対米滞在の中で学びとったことを中心に発表された。結論的には、米国は湾岸戦争直後クリントン政権において、二重封じ込め政策を掲げていた。これがその後展開をみせ、Desert Foxの空爆になる。これが昨年のイラク戦争へと繋がっていく流れとなった。何とか封じ込め政策を継続できなかったものか、ということが問題だと指摘した。

  次に日本経済新聞社論説委員の伊奈久喜氏。『アメリカの対外政策決定過程』と題して、米国が外交政策を採るに際して、継続性や一貫性をどのように担保しながら、政策へと反映させていくのかということを、米国の「四極構造(政府、議会、メディア、大学シンクタンク[ビジネス])」を示しながら述べた。随所に新聞記者らしい味わいを含ませながら、米国の外交政策も、ネオコンの力が強いと言われながらも、日本との関わりにおいてはすきま風を吹かせたくないというようなご都合主義も見えることを指摘し、かなり現実主義的なご都合主義があることを述べた。

  コメンテーターの臼杵 陽氏は、内田氏の発表については、米国に中東政策というようなものが、本当にあるのかということ、更にイスラエル・パレスチナ問題を考察した下りでは、四つの段階に分けている意図が見えないと指摘した。伊奈氏の発表については、米国では内政と外交が繋がっているのかどうかという問いを出した。

  次に森 孝一氏は、お二人の発表について、中東政策について政策決定過程はよく分からないというのではなく、合理性と非合理性の二面があり、非合理的な側面については論理よりも感情が先立つこともあるということではないかと指摘した。更に、イスラームは非合理性の高い社会であることを忘れていることが、米国のエリートの犯す誤算的な失敗に現れているのではないかと述べた。

  この後、ディスカッションになった。中心的なところでは、米国のエリートたちは早くイラクをたたきたかったところに、追い風として9・11が起こったということがある。つまり、9・11のショックが大衆のパワーを醸成して、イラク戦争も是とする流れを生み出したので、米国といえども世論の動きが大きく外交政策を動かすということにおいて差異はないことが論議された。更に、米国寄りの視点から、一括りに「中東」と言うが、やはりそこには個別的な特徴ある問題が存在しているし、地域研究を踏まえた個性的な理解を持つ必要性が浮き彫りとなった。

  最後にセンター長の森氏が、この三回の部門研究会は「アメリカについて考えよう」ということが趣旨であったが、来年度は「イスラーム圏から見たアメリカ」が主なる主題となっていくのではないかと方向性が示された。
(CISMORリサーチアシスタント・神学研究科後期課程 藤林イザヤ)

『2003年度 研究成果報告書』p.224-242より抜粋