21世紀COEプログラムによる活動記録

2005年度 第4回研究会

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日時: 2005年10月15日(土)14時~18時30分
場所: 同志社大学 今出川キャンパス 扶桑館2階 マルチメディアルーム1
タイトル: ロンドン同時テロと欧米テロ対策の展開―国際安全保障の視点から
講師: 宮坂直史 (防衛大学校国際関係学科助教授)
タイトル: 『自由民主主義』の失敗―イスラーム解放党の非合法化を中心に
講師: 中田 考 (同志社大学大学院神学研究科教授)
要旨:
 第四回の「アメリカのグローバル戦略と一神教世界」研究会では、宮坂直史(防衛大学校国際関係学科助教授)と中田考(同志社大学大学院神学研究科教授)の両氏による報告が行われた。
  まず、宮坂氏によって「ロンドン同時テロと欧米テロ対策の展開?国際安全保障の視点から」と題した報告がなされた。最初に2005年7月7日にロンドンであったテロを分析するにあたり、まず、2001年の9・11テロから当日までのイギリスにおけるテロ事件と、それに関連する情勢の経緯が詳細に述べられ、イギリスのテロ対策法の推移について説明がなされた。この法は元来はIRA対策のものであったが、9・11以降、それまでの法律では不十分との指摘のもとに徐々に強化されていったという。また、7月7日のテロに対する各国の反応の報告がなされた。氏によれば、EUでのテロ対策、より一層加速されるのではないかとしている。また、シェンゲン協約に引っかからないEU生まれのテロリストの移動をどのように食い止めていくか、という課題を指摘した。さらに、中国・ロシアの反応の報告もなされた。次いで、アメリカのテロ戦略について、2005年 10月の大統領演説に基づいた分析がなされた。そして最後に、いくつかの問題提起がなされた。1)インターネットなどでのメディアが、本来は関係ない動向を関連づけてしまう危険性。2)EU内におけるムスリムの動向。人口の多さから、その国で自己完結してしまうために、社会の安全保障の重要性。3)対テロ対策は、各国の総論、各論では一致しているにもかかわらず、実行はそれぞれの足並みが揃っておらず、時には対立しているという現実。以上にくわえて、組織だっていない「組織」にどのように対策を立てていくのかという困難さを指摘した。
  続いて、中田氏によって「『自由民主主義の失敗』―イスラーム解放党の非合法化を中心に」と題された報告が行われた。中田氏はまず、自身の立場を解説され、西欧的な概念を使わずにイスラーム古典研究をするという立場を述べられた。さらに、本発表と対応させ、「自由民主主義の失敗」とは「自由民主主義という概念構成自体が失敗している」という自身の立場を述べ、西欧で言われている意味での自由民主主義それ自体も失敗していると言われた。その例として、イスラーム解放党の非合法化の事例を挙げられた。この組織は、ネットワーク性の特質をもつ、中心不在型のイスラーム世界の中で、唯一の国際的なイスラーム組織であり、パレスチナを解放すること、カリフ制の再興を目的としてつくられた組織であるという。言動は過激であるが、行動は大人しく、それが非合法がされたため、イギリスの主要なムスリムにも危機感が出てきたと説明された。次いで、「民主主義」「自由」という西洋的概念にも疑問を呈し、テロは、「暴力の行使の威嚇によって正しい(行為者の準拠する価値・規範体系に照らして)目的の達成を目指す行為」であるとする定義づけも行った。
  次いで行われたディスカッションでは、まず最初に石川卓(東洋英和女学院大学国際社会学部助教授)と森孝一(同志社大学神学研究科教授)の両氏によるコメントがなされ、続いて、研究会全体で活発な議論が行われた。
(神学研究科博士後期課程 横田 徹)

当日配布のレジュメ

『2005年度 研究成果報告書』p.384-414より抜粋