21世紀COEプログラムによる活動記録

2006年度 第1回研究会

日時: 2006年5月23日(土)13:00-15:00
場所: 同志社大学 今出川キャンパス 扶桑館 マルチメディアルーム1
タイトル: Islam and Science: An Alternative View of Study of Nature
講師: オスマン・バカル(マレーシア国際イスラーム大学教授)
要旨:

  イスラーム科学は、近代科学とは多くの特徴を共有しながらも、なお別の精神と性質を持つ別の科学である。イスラーム科学は、17世紀にいたるまでその優秀さにおいて他の追随を許さぬものであり、その後の停滞の時期を経て、今あらためて再興されつつある。
  イスラームは西洋で近代科学が興る前から、合理性、実証主義など「近代的」といっていい特質を備えていた。同時に、古典的なイスラーム科学は、「宗教的かつ霊的」特質を備えており、クルアーンとハディースから導き出された「イスラームの諸原則」にもとづいていた。様々なイスラームの諸原則は、「タウヒード(唯一性の思想)」によって貫かれており、イスラーム科学の究極の目的は、宇宙の唯一性を明らかにし、神の唯一性を讃えることであった。
  イスラームにおいて、知識とは、まず、神からの啓示こそもっとも確実な知識とされ、すべての知識の基礎にして目的とされる。人間は、様々な知識を求めることが奨められるが、人間にとって有用な知識であるかどうか、神の啓示から導き出されたイスラーム法によって判断される。
  たとえば、イスラーム科学の宇宙観の中では、人間は「ミクロ・コスモス」であり、宇宙のすべての要素を内包している。人間は神の創造物の中でももっとも優れたものであり、他のものから進化したという考えは受け入れられない。
  現代、イスラーム科学は、「知のイスラーム化」のプロセスを通して、再興の緒にある。
  これに対して、三浦伸夫氏からコメントがあった。
・「イスラーム科学」という語が適切かどうか、古典的イスラーム科学には、ノン・ムスリム科学者の貢献もあったのではないか?
↑これに対してオスマン教授は、ノン・ムスリム科学者のイスラームの宇宙観を共有していた、そもそもイスラーム的であるとは、普遍的ということである、と答えた。
・クルアーンにおける「自然」という語の登場頻度は少ないのではないか?
↑これに対してオスマン教授は、「自然」という語自体は少ないが、自然についての言及は多い、と答えた。
・ムスリム一般がイスラーム化された知識を身につけるということは可能か?
↑これに対してオスマン教授は、「知のイスラーム化」はすでにムスリム社会に広く受け入れられており、タウヒードの原則にのっとった科学の体系を普及させることは可能である、と答えた。
(CISMOR奨励研究員・神学研究科博士後期課程 塩崎悠輝)