21世紀COEプログラムによる活動記録

2006年度 第2回研究会

日時: 2006年8月1日(火)15:00-18:00
場所: 同志社大学 今出川キャンパス 扶桑館 マルチメディアルーム1
タイトル: ダーウィニズムと自然神学
講師: 松永俊男(桃山学院大学社会学部教授)
要旨:

   第2回「一神教世界における科学と近代化」研究会は、桃山学院大学の松永俊男教授をお迎えして、「ダーウィニズムと自然神学」という題名で19世紀英国自然神学についての講演を行っていただいた。
  先生の講演は、まず自然神学の定義から始まった。そして、自然界のどこに神の偉大さを見るかという観点から、「自然界の秩序正しさに神の力を見る立場」、「「自然の斉一性」に神の力を見る立場」、「自然界に見られる巧みな構造(デザイン)に神の力を見る立場」の3つの立場があることを指摘され、英国自然神学の主流はこのうちの3つめの立場をとることであると述べられた。続いて、英国自然神学の系譜をたどることとなり、ボイル『形相と質の起源』、ベーコン『学問の進歩』、レイ『創造のみ業に示された神の英知』、デラム『自然神学』、ペイリー『自然神学』といった自然神学の代表的著作とその内容ついて言及された。その後、キリスト教信仰を保証する科学の入門書として歓迎され、空前の売れ行きを示した「ブリッジウォーター論集」まで話題を広げ、英国における自然神学の発展の全体を俯瞰した。
  また、地球の年齢に関連して聖書の『創世記』に書かれたことと、揺籃期にあった地質学における研究者であるバックランドやライエルの主張との関連についても述べられた。そして、英国国教会派の会派によって科学についての考え方が異なり、会派によっては科学の発展に大いに寄与したことを指摘された。
  さらに、ダーウィンが進化論の着想を得た時期やその内容について紹介された後に、主著である『種の起源』と自然神学との関連を述べられた。さらに、ダーウィン自身の宗教観をも論ぜられ、最後にはダーウィンがキリスト教を捨てたことにも言及された。
  最後にキングズリ、グレー及びテンプルの主張を通して『種の起源』がどのように受容されていったかの説明が加えられた。
  まとめとして、ダーウィンの進化論は英国自然神学の伝統の中から生まれ、その体裁や内容も自然神学書としてのものであったと主張された。
  先生の講演の後、ダーウィンの宗教観、キリスト教を捨てた経緯や「ブリッジウォーター論集」について等の質疑応答が活発に行われ、18時に集会は終了した。
(神戸大学大学院総合人間科学研究科博士後期課程 野村恒彦)