21世紀COEプログラムによる活動記録

2005年度 第1回研究会

日時: 2005年12月6日(火) 16:30-17:45
場所: 同志社大学 今出川キャンパス 扶桑館 CISMOR会議室
タイトル: Islam, Immigration and European Integration
講師: ムハンマド・ブードゥードゥー (モロッコ・ムハンマド五世大学教授)
タイトル: Religious Education and Cultural Acceptance of the Other
講師: エルモスタファ・レズラズィ (アジア・アラブ・メディア・ネットワーク東京代表)
要旨:
 今回の発表でブードゥードゥー氏は、EUにおけるムスリム系移民に関しての見解を発表し、現在EU各国で起こっている現象は、統合のプロセスとしてとしての「交渉」であるとした。
  同氏によれば、マグリブ地域からEU諸国への移民現象は、1960年代から顕著になっていたが当初は労働者が多く、統計的に男性で独身者が圧倒的に高い比重を占めていた。しかし1990年代ごろから母国における政治的、宗教的、社会的抑圧からの避難を求めて移住する人々も多くなってきた。現在では高学歴を有する者、独身女性などが増加傾向にあると言う。同氏は、移民をイスラーム史の枠で考えると、預言者とその最初の従者たちが行なったヒジュラがあり、彼らも始めは異教徒の新参者であったが、そのうちにマディナの町に統合していったという解釈にも言及した。
  レズラーズィー氏は、現地調査に基づいてモロッコにおける教育システムについて報告した。同氏はまず、1961年から始まった独自の教育システム、特にそれまでの植民地的影響を消し、アラビア語およびイスラーム教育を充実させる政策を説明し、今日までにかなりの成功をおさめていると評した。
また、公立学校での教科書主体の宗教(イスラーム)教育に対して、アブドゥル・サラーム・ヤースィーンが代表するイスラーム主義組織「公正と慈善の団体運動」における構成員への教育システムについても触れ、それを段階的な教育と進級制、そして古典的イスラーム世界の師弟制的な上下関係によって、メンバーへのしっかりした教育と堅固な組織構造を築く上で効果を発揮しているとした。
ディスカッションでは、モロッコや他マグリブ地域、エジプト、またEU地域在住マグリブ系移民の宗教や宗教教育などへの意識について質問が提起された。
(COE研究指導員 中村明日香)