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「中国宣教師マッテオリッチ(利瑪竇)と日本でのレガシー」+研究会「16世紀の日本とドイツにおけるキリスト教神学」

公開講演会

「中国宣教師マッテオリッチ(利瑪竇)と日本でのレガシー」+研究会「16世紀の日本とドイツにおけるキリスト教神学」

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日時: 2016年06月18日(土)10:00-15:00
場所: 同志社大学今出川キャンパス
研究会:神学館地下G1教室
講演会:神学館チャペル
講師: アントニ・ウセレル准教授(サンフランシスコ大学 利瑪竇中西文化歷史研究所 所長)
村上みか教授(同志社大学神学部 教授)
要旨:
 1549年にフランシスコ・ザビエルが日本に宣教にやって来たこと、その後の禁教令によって多くの切支丹が苦境に立たされたことは広く知られている。一方で、なぜそのような中にあっても、キリスト教の教えが一部の信者ならびに知識階層の中に浸透していったのかに関する検証はさほど進んでいない。本講演は、ザビエル以降に東アジアにやってきた宣教師たちがどのようにキリスト教の教えを広めようとしたのか、そして日本ではどのような形で彼らの宣教の軌跡を辿れるのかを史料から紐解くものである。
 ザビエルはその日本滞在を通して、日本での布教のためには、中国での宣教が必要不可欠であると考えた。日本と中国との結びつきが歴史的にも、政治的にも強いことがその背景にある。この考えを引き継いだのは、イエズス会東インド巡察師として中国および日本に派遣されたアレッサンドロ・ヴァリニャーノであり、また彼の後にマカオに派遣されたミケーレ・ルッジェーリやマッテオ・リッチである。
 マカオに居を構えたルッジェーリとリッチは、中国の様々な学者や皇帝の側近と交流する中で、中国の文化に適応し、特に言葉を学ぶことが宣教の近道であると考えた。また、「中国においては言葉よりも書物が重視される」という点に気づいた両者は、漢文で書物を著すようになった。ルッジェーリによる中国語のカテキズモ『天主実録』(1584年)や、リッチによる教義に関する書籍『天主実義』(1603年)がその最たる例といえる(なお、リッチは宣教師の中で最も多くの書籍を著している)。
 これらの本は、日本で宣教をおこなうヴァリニャーノにも重宝されたようで、リッチによるヴァチカン宛ての書簡(1605、1608年)は、漢文で著された在華宣教師たちの書物が日本で大いに役立っているとの知らせをヴァリニャーノから受けたこと、より多くの本を送るよう要請されたことを伝えている。また、リッチらによって現された漢籍は、キリスト教の教義に留まらず、暦法、地図類、『交友論』(古代ギリシア・ローマの哲学者による交友に関する本を集めて編纂されたもの)、『幾何原本』(リッチ口授、徐光啓翻訳・筆記)なども含んでいた。多種多様な内容を表したこれらの漢籍は、次第にその影響力を日本で拡大していくこととなる。
 日本がキリスト教の思想の拡大と、リッチらの漢籍の影響に危機感を募らせたのは、リッチの死後まもなくのことであった。江戸幕府は、教会の破壊と布教の禁止を命じ、また1630年には禁書令が発布された。禁書目録が作成されただけではなく、書物目利きや書物改めの任を担う部署まで作られらた。この禁書目録の中には、科学に関する本(例、『幾何原本』)も含まれている。幕府側が、リッチをはじめとするイエズス会士によって著された本であれば何でもキリスト教(邪教)と関連していると考え、危険なものと認識していたという事実を読み取ることができよう。このような幕府側の姿勢は、享保5年(1720年)の御制禁御免書籍訳書で幾分緩和され、「邪宗門の勧法でなければよい」、すなわちキリスト教を勧める類の本でないならば輸入してもよいこととなった。しかし、その間の約百年間は、イエズス会士らによって書かれた漢籍は日本では禁じられていた、ということになろう。
 ところが、昨今様々な大学、研究機関、官庁で行われている漢籍のデジタル化プロジェクトの公開データを見てみると、リッチらによって書かれた漢籍は、禁止されていた空白の百年間の間にも存在したということがわかる。これらの書物の中には、イエズス会の印や「利瑪竇」の字を消したり破ったり、あるいは耶蘇教との関連がわかってしまう記述の一部を伏せているものが見られる。興味深いことに、林羅山をはじめとする学者、昌平坂学問所、宮内庁などにも禁書に指定されていたものがあった。つまり、キリスト教から、あるいは西洋の科学を学ぼうとする人々の探究心を「禁教令」や「禁書令」がねじ伏せることはできなかったのである。現存する史料は、人々が試行錯誤してリッチらの書籍を手にしようとしたということを証明しているといえよう。
(CISMOR特別研究員 川本悠紀子)
※講演会・研究会とも使用言語は日本語です。
※講演会は事前申込み不要ですが、研究会へ参加希望の方は、①名前②所属と身分をご記入のうえ、同志社大学一神教学際研究センター info@cismor.jp までメールにてお申し込みください。 参加費はどちらも無料です。


講演会主催:同志社大学神学部・神学研究科
研究会主催:同志社大学一神教学際研究センター
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