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【研究者・学生対象】ラーズィーのイスラーム神学における役割について

公開講演会

第1回イスラーム学研究会

【研究者・学生対象】ラーズィーのイスラーム神学における役割について

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日時: 2017年06月16日(金)15:00-16:30
場所: 同志社大学今出川キャンパス 良心館4階RY434教室
(京都市営地下鉄烏丸線「今出川駅」下車3番出口徒歩1分)
講師: ターリク・ジャファー(アーモスト大学宗教学科・准教授)
要旨:
講義の前半で、Jaffer 氏は、イランに生まれたイスラーム伝統学の傑出した学者、ファフルッディーン・ラーズィー(1210年没)について紹介した。彼はその人生の大半を、知識を求めて中央アジアを旅した。Jaffer 氏は、ラーズィーの生涯と旅に関して、彼が行った、ムウタジラ派、マートゥリーディー派、カッラーム派など、中央アジアの多様な知的潮流の代表的学派たちとの学問的論争について概述した。Jaffer氏はさらに、ラーズィーの知的教養について、彼が理性的な知識(哲学や科学など)と、伝統的な知識(クルアーン・タフシール・法・ 神学・スーフィズム / イスラーム文明における神秘主義)とを、統合的に自己のものとしていたことを説明した。それからJaffer氏は、ラーズィーの知的教養の大枠を示し、理性と伝統に基づく知識を、彼がクルアーン解釈書の執筆の中で組織化、体系化した方法論について述べた。そして、ラーズィーのクルアーン解釈における学問的方法論と体系化が、イスラームの知的伝統での注目すべき革新であり、クルアーン解釈におけるムスリムの学問的方法論を一変させる知的作業であったと説明した。Jaffer氏はこの点を強調しつつ、クルアーンの解釈に関して、ラーズィーの学問的方法論と、先達のクルアーン解釈学者たち、特にタバリーとザマフシャリー(彼はラーズィーに多大な影響を与えた)とを比較した。タバリーがクルアーン解釈を、主に預言者の伝承(ハディース)を通じて行ったのに対し(彼はその生涯をハディースの収集と研究に費やした)、ザマフシャリーはクルアーン解釈を、「人間理性の論理性 (implications of human reasons)」と調和させることを目指した。ラーズィーはこれら双方の学問的方法論を継承したが、イスラーム哲学者のヘレニズム的な世界観を、ムウタジラ派神学の成果と調和させることによって、更にクルアーン解釈学を前進させた。その結果、彼はスンニー派神学の学問的世界観の基礎を変えたのだった。
 講義の後半でJaffer氏は、ラーズィーの『死の床での神への悔悛 (Testament)』、あるいは『最後の意思表明 (Last Will)』について論じた。彼は、当該論考からクルアーンに対するラーズィーの立場、敬虔さ、そして合理的思考に基づいたイスラームの伝統学に関する彼の著作の目的を読み取ることができると主張した。Jaffer氏は、ラーズィーの『死の床での神への悔悛』、あるいは「最後の信仰告白 (death-bed repentance)」がイスラーム文献資料として保存されてきたこと、中世イスラーム時代で解釈されたこと、さらに西洋の学者たちも解釈を試みたことなどを様々な点から説明した。彼は、合理的思惟に基づいたイスラーム伝統学の学者(ラーズィーもその一人だが)が死の床で神への悔悛に至るというテーマが、イスラーム教徒の学者たちの間で繰り返し論議されてきたことを説明した。ラーズィーの死の床での神への悔悛の論考は、合理主義的学者たちに対するイスラームの伝統学者たちの偏見を解消させるものだった。Jaffer氏はまた、偉大なイスラーム伝統学者であるイブン・タイミーヤが、ラーズィーの敬虔さと彼の著作の目的をめぐり、先行する学者たちの当該論考を踏まえて、新たに解釈を試みたことを説明した。イブン・タイミーヤはラーズィーの異端的立場(合理主義に基づく伝統学)の当該論考を検証したが、その際に、イスラーム伝統学の従来の方法論を用いた。イブン・タイミーヤはラーズィーの死の床での神への悔悛論の解釈を通じて、ラーズィー自身が合理主義への厳格な固執に偏ることは、好ましいイスラーム的人格と両立しないと考えていたと指摘した。Jaffer氏は当該論考から、ラーズィーが合理主義と、クルアーンとスンナを厳密に遵守することとが完全に両立し得ると考えていたことを意味すると解釈できることを指摘した。Jaffer氏は最後に、クルアーンの解釈書におけるラーズィーの貢献と役割とは、人間の理性を通して到達した結論が、クルアーンの内容とどのように調和し得るかを示すことだったと結論した。

 (CISMOR特別研究員 北村徹)
!!日時、場所が変更になっています。お間違えの無いようご注意ください!!
※研究者・学生(聴講生含む)が対象です。
※英語講義。通訳は予定していません。
※できるだけ事前に事務局へ申し込んでください。
rc-issin■mail.doshisha.ac.jp (お手数ですがメール送信の際■を@に変えてください。)

 
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