同志社大学 一神教学際研究センター CISMOR

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イスラエル――民主主義、宗教、そしてイスラエル・日本関係について

公開講演会

21世紀COEプログラム公開講演会

イスラエル――民主主義、宗教、そしてイスラエル・日本関係について

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日時: 2006年07月08日(土)午後2時~4時
場所: 同志社大学 今出川キャンパス 神学館 礼拝堂
講師: エリ・コーヘン(在日イスラエル大使)
要旨:
エリ・コーヘン駐日イスラエル大使は2006年7月8日、同志社大学神学館で「イスラエル――民主主義、宗教、そしてイスラエル・日本関係について」と題し講演した。大使は1949年、エルサレム生まれ、ヘブライ大学卒業。国防大臣補佐官、国会議員を経て2004年から駐日大使。武道にも造詣が深い。同講演は、21世紀COEプログラム公開講演会としてCISMORが主催した。以下はその要約である。

イスラエルは1948年に建国の宣言を行なったが、建国の唯一最大の理由は2000年間、国家を持たず世界に分散してきたユダヤ人が平和に暮らす場所を持つということだった。建国宣言のほかに、憲法はないが、ユダヤ国家であると同時に民主主義国家である。
ユダヤ教の伝統を重んじながら、かつ自由と平等を尊重する近代民主主義を並行させることは、問題や矛盾をはらんでいるともいえるが、実際には解決は容易である。というのも、イスラエル国民であれば、完全な宗教の自由があるからである。国民の宗教分布は87%がユダヤ教徒、17%がムスリム、残り2%はキリスト教、ドルーズ、チェルケス、バハーイー、モルモン教徒などで占めている。しかし、どの宗教の信仰、儀式とも尊重され、ユダヤ教への改宗を説得するとか、まして強要するなどということはあり得ない。もちろん、ユダヤ教の信仰にも程度の違いがあるが、国民の50%強は、必ずしも聖書が説く法にこだわらず、民主主義的な生活習慣を基本にしながら、必要な場合はユダヤ的伝統を守ろうとしている。
歴史的に見ると、1948年、アラブ諸国との戦争が勃発、49年に休戦したが、その際イスラエル国内にアラブ人約30万人が残る状態となった。それらの人々には完全に市民権が与えられている。ただ、市民権を欲しない人には強制しない。イスラエルの法律では男性は18~21歳の3年間、女性は2年間、兵役義務がある。アラブ人が市民権を得て、その結果兵役に就けば戦争相手国にいる兄弟姉妹と対決しなければならないかもしれない。そういうデリケートな問題があるからである。
去年、日本を訪れた一人のパレスチナ系イスラエル人の例をお話したい。彼は5年間、アラファト議長のアシスタント兼アドバイザーを務め、その後5年間、イスラエルの国会議員にもなった。イスラエルという国を裏切らない限り、自分の信じるもののために戦うのは自由である。実際には、国内でも複雑で理解し難いと思われた問題ではあったが、同時にイスラエルがいかに民主的な国家であるかを示していると思う。
1947年、デビッド・ベングリオン氏ら建国に携わった指導的な人々が建国後の困難を予想して、国家、宗教、民主主義をどう妥協させるか、今日まで影響を及ぼす重要な書簡をまとめた。特に安息日、食事、婚姻、教育の四点について触れている。しかし、戒律を守りながらも現実的便宜を図る傾向も広がりつつある。婚姻は、ユダヤ教、イスラーム、キリスト教など宗教の違いは問わないものの、宗教的儀式を経ないで弁護士や裁判官の前で署名、宣誓するだけの結婚は認められない。ユダヤ教、キリスト教、イスラームなど異なる宗教同士で結婚する場合は、男女のどちらかが改宗して二人とも同じ宗教になる必要がある。そこで今、キプロスへ行って弁護士の前で宣誓するだけの結婚をしてイスラエルに帰国するという方法が流行している。しかし、その場合も子供はどちらにするのか、という問題が残る。宗教政党が固執したので、イスラエルの航空会社である「エルアル航空」は土曜日は飛行機を運航しない。それでエルアルの飛行機を貸して「サンド」という別会社を設立し、曜日に関係なく関西空港にも乗り入れができるようになった。日本とイスラエルに関してはまた、小泉首相が今週イスラエルを訪問される。また今年11月に「サンド」航空で日本のVIP100人をイスラエルにお招きしたい。今後両国関係は飛躍的に緊密化するだろう。 2006-7年は両国観光年で、交流を一層拡大したい。

大使はこの後、来場者の質問に答えて中東紛争について語り「わが国は建国後58年間、平和を求めてきた。強いられた戦争を戦ってきたのである。9月にもわれわれは大きな妥協をした。ガザからイスラエル人1万人を移住させ、村もシナゴーグも解体し、土地をパレスチナ側に渡した」「ただし、ユダヤの伝統では個人個人が神を表すと考える。だから、兵士や市民が誘拐されれば、全力をあげて救出するのが道義であり非難されることではない」などの見解を述べた。

(法学研究科博士後期課程 田倉文雄)
【主催】同志社大学一神教学際研究センター(CISMOR)
【共催】同志社大学法学部・神学部
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