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中東有力メディアの現状とその影響力 ―アル=アハラーム新聞とアル=ジャジーラTV―

公開講演会

CISMOR/笹川平和財団・笹川イスラム中東基金 共催講演会

中東有力メディアの現状とその影響力 ―アル=アハラーム新聞とアル=ジャジーラTV―

  • 中東有力メディアの現状とその影響力1
  • 中東有力メディアの現状とその影響力2
日時: 2010年06月17日(木)14:00−16:00
場所: 同志社大学今出川キャンパス 神学館3階 礼拝堂
講師: カマール・ガバラ(アル=アハラーム新聞 副編集長)
ムハンマド・シュケイル(アル=ジャジーラ放送 番組編集者)
要旨:
 まず、アラブにおけるメディアの現状と、アル=アハラーム新聞について、カマール・ガバラ氏が紹介をおこなった。現在のアラブ諸国においては、若者の人口がとても多くなっている。21歳以下の人口が50%を超える国もあるほどである。こうした人口構成は、メディアにとって大変重要であると言えよう。新しい世界観に対応しなければならず、しかも、新しいメディアへも対応しなければならない。アラブのメディアは、内容面でも技術面でも刷新の時期を迎え、それへの期待が高まっている。これまは、アラブ世界の経済成長とともに、新聞やテレビといった従来のメディアも成長し、デジタルメディアも発展してきた。ただ現在は、世界的な経済危機の影響を受け、メディア産業の売上も低下してしまっている。危機前の状況に戻るのは、2011年頃になるだろうと見られている。
 アラブ諸国のなかでも、アル=アハラーム新聞の本拠地であるエジプトは、報道の自由の拡大によって、とりわけ活気を見せるようになった。2009年の時点で、新聞は180紙、雑誌は341誌が発行されている。テレビでは衛星放送も始まっており、アラブ全域に番組を発信することができるし、BBCの放送を受信することもできる。そしてテレビ局は、政治にかかわる主張や批判を活発に展開しており、議会や政党と並ぶ独自の「公」の役割を果たすようになった、と言えるだろう。
 そうしたエジプトの数あるメディアの中でも、アル=アハラーム新聞は最大の新聞社であり、1875年に創設された歴史ある新聞社でもある。創立以来から重視してきたのは「アラブの精神」である。当初は、アレキサンドリアで週刊紙として始まったが、1881年には日刊紙になり、現在の本社はカイロにうつった。今のところ地方紙を三つ、国際版をロンドン、フランクフルト、ニューヨークで発行し、週刊誌、月刊誌も手がけている。アラビア語版は、ドバイとクェートで発行し、インターネット版も発信するようになった。
 このように活況をみせているアラブのメディアであるが、いろいろな問題を抱えていることも間違いない。テレビの影響力は大きいが、あまりニュース番組は見られていない。それに、アラブ諸国では「情報公開」を法律として定めている国がないので、情報不足が問題となっている。また今でも、ジャーナリストが自分の意見を言うと、場合によっては投獄されるという事態も起こっている。活字メディアの問題としては、読者の減少が挙げられよう。それに伴い、優秀な人材を確保するのが難しくなっているし、若手ジャーナリストの専門的な技術が育たなくなってしまった。このような現状の問題点を指摘して氏は、講演を終えた。
 次にムハンマド・シュケイル氏が、アル=ジャジーラTVの紹介を行った。アル=ジャジーラTVは、1996年にカタール政府の支援を受けて設立された衛星テレビ局である。
 アル=ジャジーラを一躍有名にしたのは、オサマ・ビンラーディンのメッセージ映像を独占的に放送したことであった。つづいてイラク戦争ではアメリカが隠していたイラク市民の被害、あるいはアメリカ兵の捕虜が虐待され死亡している事実を報道したことによって、アメリカ政府と真っ向から対立するようになる。しかしアメリカ政府だけでなく、イラク政府とも対立することがあり、一時は、記者が国外退去を命じられる事態にもなった。つまり、アメリカ政府からもイラク政府からも嫌われていたわけで、これはアル=ジャジーラが、それだけしっかり仕事をしていたことの証だと言えよう。
 アル=ジャジーラの信条は、「声を出せない人の声を伝える」ということ、そして「反対意見を平等に伝える」ということである。これらをなるべく実現するために、粘り強い取材を心がけ、出来事の背景について深くさぐろうとしている。その点、欧米のメディアは、不十分なのではないか。例えば、日本の報道でも「自爆テロ」という表現をよく聞くだろう。そういう報道を聞けば、それは恐ろしいテロリストの行動というふうにしか思えないかもしれない。しかし私たちは、彼らが何故そのような行動をしなければならなかったのか、という背景まで伝えたい。彼らは、アメリカやイスラエルの大型戦闘機によって爆弾を落とされ、土地を失い、家族を喪い、生きるよすがをなくした。彼らには戦うすべも限られているから、自爆テロに走ることになる。こういう背景を知ってほしい。もちろん、そうした報道をするからといって、私たちが自爆テロを起こした人たちに共感しているのではない。その行為は間違っていると思う。しかし、その行為の背景をさぐり、事実として伝える必要があるとも思う。そうした事実を報道して視聴者に判断材料を提供したいと考えている。
 氏は、アル=ジャジーラが、政治的な意図ではなく、人道的な見地から報道を行っていることを強調した。こうしたアル=ジャジーラの信条は一見、価値の多様性を重視し、ヒューマニズムを掲げる欧米や日本の信条となんら異ならないように思われる。しかし、時おりユーモアを交えながらも真剣に、中東での出来事の背景について深く説明する氏の熱弁は、欧米人や日本人の観点に、鋭く反省を迫るものであった。

(CISMOR特別研究員 藤本 龍児)

入場無料、事前申込不要英語による講演となります(逐次通訳あり)
お問合わせ: 075-251-3972(CISMOR事務局)
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6月19日(土)にも公開講演会を開催致します。
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