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新興国における穏健イスラームと市民社会運動の役割   ―インドネシアのムハンマディーヤを事例に

公開講演会

新興国における穏健イスラームと市民社会運動の役割   ―インドネシアのムハンマディーヤを事例に
Moderate Islam and the Role of Civil Society Movements in Emerging Economies: A Case of Muhammadiyah in Indonesia

  • 新興国における穏健イスラームと市民社会運動の役割1
  • 新興国における穏健イスラームと市民社会運動の役割2
日時: 2013年07月20日(土)13:30-15:00
場所: 同志社大学今出川キャンパス 神学館3F礼拝堂
講師: Dr. Din Syamsuddin(国立イスラーム大学ジャカルタ校教授、インドネシア・ムハンマディーヤ総裁)
要旨:
  公開講演会の講師は、ムハンマディーヤの総裁を務めるMuhammad Sirajuddin Syamsuddin氏であった。Syamsuddin氏は、国立イスラーム大学イスラーム政治思想学部教授でもあり、博士号をアメリカで取得し、これまで多くの著作を執筆してきた。本講演では、主にインドネシア国内におけるムハンマディーヤの活動目標と役割について話された。ムハンマディーヤとは、1912年に設立されたインドネシアで二番目の規模のイスラームの市民団体である。ムハンマディーヤの目標は、西欧の文化を吸収してインドネシアの近代化を進めること、および、個々人のイスラーム信仰を純化することによってインドネシアのムスリムの倫理意識を高めることである。それによって、個々人の幸福が高まり、社会福祉の安定と国家の繁栄が可能になるとしている。具体的には、教育活動を通して、インドネシアの多文化主義と民主主義を推進することである。設立の1912年はインドネシア独立以前のことであり、1945年の独立に大きな力を発揮した。また、それ以後はインドネシアの国家発展に協力をしてきた。そのため、西欧の市民社会運動とは異なり、国家との距離が近く、その活動を助けるのが一つの特徴である。ムハンマディーヤの活動は、主に教育に重点を置いており、ほかに医療機関の運営やマイクロファイナンスの提供等を行っている。ムハンマディーヤは、インドネシア各地に1万以上の学校機関を設立運営しており、それらの学校には伝統的なイスラーム教育の学校の他に、近代的な方式のイスラーム教育の学校も含まれている。いくつかの学校では、非ムスリムも受け入れている。また、数百の医療機関も設立運営している。これらの活動は、政府の教育や医療の活動とともに、インドネシア各地域にて重要な役割を果たしている。インドネシアは、東アジアで四番目の経済規模をもつ国であり、目下のところ目覚ましい経済発展が進んでいる。Syamsuddin氏によれば、中国、日本、インドにつづく国家として、インドネシアは、東アジアの調和とパートナーシップの推進に貢献する必要がある。そのためにムハンマディーヤも対外的活動を行っている。たとえば、フィリピンのミンダナオ島における和平活動、タイ南部のイスラームとタイ政府の融和への協力がある。ただし、活動の中心は、これからも教育社会活動でありつづけるという。
 講演会につづいて、非公開の研究会が開催された。はじめに、司会の中西久枝氏から、講演会について二点のコメントがあった。一点目は、サラフィーアの概念はその意味することが多様であるという指摘である。サラフィーアはもともと、特に19世紀以降のイスラーム復興運動の主流となった、ムハンマド・アブドゥーラに始まる思想運動である。その思想は、西洋近代文明を摂取しつつ、イスラームの再解釈を行って、本来のイスラ―ムに立ち返り、その復興を目指すものだった。それが現在では、イスラームの過激派や軍事力を用いる集団をも含むようになっている。二点目は、ムハンマディーヤの活動は、国内にとどまることなく、国外にも活動の幅を広げており、国境を超えているという点でグローバル社会の中で重要な意味をもつという指摘である。Syamsuddin氏は、このコメントに対して以下のように応答した。まず、サラフィーアは、アメリカの9.11テロ以降重要になっており、ジハーディズムやワッハービズムとの境界は曖昧である。サラフィーアとは、クルアーンやスンナに帰ることを目指す運動であり、どのように帰るのかについての方法が問題になる。さらに、グローバルに人やモノや移動する世界にあっては、イスラームの信仰と共同体の維持発展と、他宗教や非イスラーム社会との関係が問題になるとも指摘した。この意見を皮切りに、出席者から積極的な質問がSyamsuddin氏に対してなされ、専門的な議論が行われた。そこで論点となったのは、ムスリムは世界各地に、非イスラーム社会を含めて居住しているという事実、そしてインドネシアをはじめイスラーム社会にも様々な宗教文化の人々が住んでいるという事実である。このような多文化社会にあっては、異文化や異宗教との相互理解や共存が重要である。これに関連して、ダール・アル=イスラームやダール・アル=ハルブの概念について、現代社会の状況を踏まえての討議が行われた。イスラーム社会と非イスラーム社会は、二つの異なる社会が併存しているのではなく、相互に入り組んで一つの社会の中にあるという指摘もあった。また、ムスリムは世界各地に住んでいるため、イスラームの共同体は、各国の国境に限定されることはない。それゆえ、イスラームの共同体は、ムハンマディーヤのようにある主権国家の発展に貢献する側面がある同時に、主権国家の範囲を超えてイスラームの連帯を求める側面があり、この両方の側面を考えることが必要であるとの議論がなされた。そして、多様な宗教と文化が入り組んで暮らす社会の中で、多文化共生と民主主義の推進、同時に、イスラームの共同体の発展を考えることが重要であるとされた。    (CISMORリサーチ・アシスタント 藤本憲正)
【概要】 インドネシアは新興国として市場経済化の進展してきました。イスラーム市民社会の代表格である ムハンマディーヤの多民族和解と宗教間対話に関する活動について、組織の立場からお話していただきます。


※英語講演、通訳はございませんので、ご了承ください
※入場無料、事前申し込み不要
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