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現代ヨーロッパのイスラムフォビア

公開講演会

第2プロジェクト ドキュメンタリーフィルム上映+パネルディスカッション

現代ヨーロッパのイスラムフォビア

  • 現代ヨーロッパのイスラムフォビア1
  • 現代ヨーロッパのイスラムフォビア2
日時: 2011年07月20日(水)17:00−20:00
場所: 同志社大学室町キャンパス 寒梅館地下1階 クローバーホール
講師: 内藤正典(グローバル・スタディーズ研究科長・教授)
森千香子(南山大学外国語学部准教授)
見原礼子(グローバル・スタディーズ研究科助教)
菊池恵介(グローバル・スタディーズ研究科准教授)
要旨:
近年のフランス社会を揺るがしている問題のひとつに、いわゆるムスリムの「スカーフ問題」がある。すなわち、非宗教性(フランス語で「ライシテ」)を国是とするフランスの公立学校において、ムスリム女学生のスカーフ着用を認めるべきか否かをめぐる論争である。1989年の最初の論争以来、繰り返し議論がなされてきたが、2004年に制定された「公立学校におけるこれ見よがしな宗教シンボル着用の禁止法」(通称「宗教シンボル禁止法」)をもって「決着」したかと思われた。だがその後も、スカーフをめぐる議論は、ことあるごとに蒸し返され、現在もなお燻り続けている。
 今回は現代ヨーロッパのイスラムフォビアをめぐる問題を考えることを目的として、二部構成での企画を開催した。第1部ではまず、ジェローム・オスト監督の長編ドキュメンタリー『スカーフ論争—隠れたレイシズム』(Un racisme à peine voile, 2004)を上映し、この15年にわたる論争の背景を探った。このドキュメンタリーは、当事者でありながらフランス国内の論争で無視されがちであったムスリム女性に対するインタビューを中心に構成されており、当事者抜きで展開してきた論争の根本的な見直しを迫る貴重な映像資料ともなっている。そこには、スカーフを着用していたために実際に退学処分を受けたムスリム女性のインタビューも含まれている。彼女達の証言からは、「宗教シンボル禁止法」が単にフランス公教育の非宗教性原則を確認し補強するのみならず、スカーフを着用する女性たちの教育の機会や進学・就職の道を閉ざすものでもあったことが明らかになる。
 スカーフが持ちうる意味は多様であり、女性たちの声もまた多様である。それにもかかわらず、フランスのメディアや政界での論調は、「スカーフは女性抑圧のシンボル」であるとか、更には「スカーフを被る女性たちは、したたかにイスラム原理主義を広めようとする」といった否定的ステレオタイプによるものが大勢を占めている。こうした論調は結果的に、フランス社会のイスラムフォビア(反イスラム感情)を助長することにつながっており、このことはいかにイスラムフォビアの最も鋭い矛先がムスリムのスカーフに向けられているかを示すものでもある。
 第2部では、4名のパネリストによるディスカッションを行った。ドキュメンタリー内容の補足と作品が公開された2004年以後のフランス社会の動向説明に加え、9・11以降、ヨーロッパ全体に拡大するイスラムフォビアについて、とりわけ隣国のベルギー、オランダ、ドイツの事例を取り上げながら議論を行った。
 現代ヨーロッパのイスラムフォビアを考えるうえで重要な点の一つとして、フランスのライシテという非宗教性原則がヨーロッパで特殊な位置にあるという事実がある。ヨーロッパ諸国の中でもフランスほど厳格な非宗教性原則を有している国はほかに存在しないのである。たとえば多くのヨーロッパ諸国の公教育では宗教教育が現在でも広く実施されており、1970年代以降はいくつかの国においてイスラム教育も導入され実施されてきた。だが、このように宗教多元主義的な社会においても、近年ではあからさまなイスラムフォビア的言動が増加したり、反イスラム的政策を唱える政治家が台頭するなどといった現象がみられる。つまり、現代ヨーロッパのイスラムフォビアの問題は、公的領域における宗教性の度合いによるのではなく、むしろイスラムを排除するレトリックの一つとして非宗教性原則が用いられることにあるのである。この根源にあるものこそ植民地主義的思考様式である——ドキュメンタリーではそのことも強調されていた。

(グローバル・スタディーズ研究科助教 見原礼子)
※入場無料・事前申込不要
【主催】CISMOR/ 同志社大学グローバル・スタディーズ研究科
【共催】同志社大学 神学部・神学研究科
*CISMORよりお知らせ*
7/20当日は台風の影響が予想されますが、予定通り開催致します。
皆様ご無理のない範囲でご参加くださいますよう、お願い申し上げます。
パネルディスカッションプログラム