公開講演会

米国のアジア外交
U.S. Policy In Asia

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日時: 2015年11月04日(水)16:30-18:00
場所: 同志社大学今出川キャンパス同志社礼拝堂
(京都市営地下鉄烏丸線「今出川駅」下車3番出口徒歩3分)
講師: アダム・ガーフィンクル(アメリカンインタレスト編集長)
要旨:
Garfinkle氏は米国の安全保障、外交政策における戦略を歴史的観点から論じた。
 現在は先の時代に成功を収めた一つの概念が終わり、それに代わるものがまだない過渡期にある。米国の大戦略(grand strategy)を振り返ると、最初は土地を北米で確保するというもので、成功し役目を終えた。続いたのはアルフレッド・セイヤー・マハンの考えに沿った、ヨーロッパと東アジア二正面での覇権国対抗戦略である。それは技術の進歩により他国が領土を脅かす危惧が生じたことと、両地域に覇権国が出現する可能性に対して大規模な軍事力を維持する必要があるためだった。その可能な実施方法は当時まだ強力だった英国の海軍力に頼ることと、海軍力を中心に米国自身の力の増強であった。1930年代に覇権国としてドイツと日本が登場したことで、米国は戦略を実施すべく戦争を行った。終結後はユーラシア両端で軍事力を持つに至り、多くの米国人は国際政治において力ではなく人権や国々の協力関係が重視される新しい時代の登場を期待した。
 しかしその後、新たな覇権国としてヨーロッパでソ連、アジアで中国が台頭し、冷戦のイデオロギーが地政学的な思考に適合した。そこでマハンの戦略の実施と同時に、ブレトンウッズ体制、すなわちIMF・世銀など一連の経済体制が創設され、それにより欧米諸国が経済力を確保し、共産諸国に対抗する力をつけること、次にヨーロッパとアジアで米国を中心とする同盟体制を構築、主導することで再び両地域での覇権国対抗戦略を進める体制が生まれた。加えてユーラシアを挟んだ海・空軍の前方展開も重視された。それは米軍の力をヨーロッパとアジアで維持して地政学的に力を獲得し、両地域で安全保障面での競争を抑えるという形で機能した。
 この戦略も成功し、ベルリンの壁崩壊、ソ連崩壊、中国の変化の中で、クリントン政権期には「今や米国の力や価値観、評判が一体となり、勝利を祝える時代が来た」とみなし、もはや大戦略は必要ないとされた。しかし2011年の9・11テロにより、ブッシュ政権は新しい理論を作り、戦略として打ち出した。それは大量の死傷者を生み、大量破壊兵器の拡散を進めるような、非国家主体によるテロこそ米国の国益にとって最も警戒しなければならないと考えた戦略だった。しかし、恐れられた脅威がそれ以上発展しなかったため早々に役目を終えたと言える。
 2009年に就任したオバマ大統領が安全保障を当時どのように理解し、戦略的な概念を持っていたのかに関しては意見が分かれる。共和党は大統領が米国の衰退を望み、敵国との関係構築の中で同盟国との関係を意図的に悪化させ、軍事力を損なう方向に政策をきり、国際政治の現実に対する理解が非常に甘いと批判した。また同盟国に責任を転嫁していくオフショア・バランシングを批判し、自由や民主主義といった考え方や規範を浸透させていくにはその国が相応の力と評判を備えてこそ可能となることを大統領は全く理解していないとみた。
 他方、オバマ大統領の支持者たちは、冷戦下で出来た制度や同盟体制がもはや過去のもので陳腐化しており、壊した方がよく、テロへの対応だけが重要であると考えている。その考えは大統領と合致している。回り回ってオバマ政権はブッシュ政権と同じ考えに辿りついており、それが支持の要因になっている皮肉な状況にある。オバマ大統領もその支持者らも戦後の大戦略から新たな大戦略に移る間には不安だけが増大すると理解しているが、最終的には外交政策のコストや危険性が減り、紛争に介入せずに済むようになると考えている。その背景には、米国が引けば他国が出てくるか、あるいは紛争当該国自身が自分で安全保障を維持したり、地域ごとに紛争解決がうまく進むようになるとの考えがある。
 国際政治の役立つ方程式に「力+意志=評判」があり、政策の関数としての評判が影響力を作り出すとされるが、現政権によって米国の評判と影響力は損なわれたと言える。世界の指導者たちは目の前の危機一つ一つを個別の危機として捉えてきた傾向があるが、それらが積み重なることでグローバルな不安、安全保障体制の崩壊が起こっているのが現在の世界だろう。
 Garfinkle氏は以上のように述べて講演を終え、その後、会場との質疑応答が行われた。
(CISMOR特別研究員 朝香知己)
※英語講演・逐次通訳あり
※入場無料・事前申込不要

【主催】同志社大学一神教学際研究センター
【共催】同志社大学アメリカ研究所/同志社大学神学部・神学研究科
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