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頑強な女性のアイデンティティー ──エジプトにおける革命前後の政治的変化をめぐる小説、物語、賭け

公開講演会

頑強な女性のアイデンティティー ──エジプトにおける革命前後の政治的変化をめぐる小説、物語、賭け

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日時: 2015年02月14日(土)13:00-15:10
場所: 同志社大学今出川キャンパスクラーク記念館2階チャペル
講師: ロブナ・イスマイール(カイロ大学文学部准教授)
【コメンテーター】岡 真理(京都大学大学院人間・環境学研究科教授)
要旨:
 Ismail氏によれば、今回の革命には大勢のエジプト人女性が参加したが、革命後は公の場での女性の身体への暴力が噴出し、既得の女性の権利を無効にすることが目指され、選挙では非常に多い女性票が開票時に操作された。それに対してマスコミが攻撃し、また多彩な芸術的才能を持つ女性達に導かれ女性の政治・社会参加を求める動きが非常に活発化している。
 エジプト人女性にとって重大な歴史的出来事に、エジプトのルネサンスの失敗と湾岸諸国への移住がある。後者はエジプトの経済的不況や政治腐敗から多くの女性らが産油国へと逃れ、そこで保守的なムスリムの考え方を身に着け戻ってきたことである。前者は19〜20世紀に起こった近代化である。1899年に貴族階級出身のカシム・アミンが女性の基本的な権利として教育と男性との平等を主張し、貴族階級や上・中流階級に強い影響を与えた。1920〜40年代に
は女性の活動家や作家が次々と現れた。ドリア・シャフィークはアラブ女性の解放運動という組織を設立、雑誌の発行や、女性の参政権を求め女性のデモを組織し国会に侵入したりハンストを行った。しかし1952年の革命後、ナセルが権限を獲得して女性の問題は重要視されなくなった。
 エジプトにおいて女性の権利は時の政治、特に独裁政権に大きく左右され、かつての女性の権利を求める一連の活動は無視されてきたが、それを再び歴史の表舞台に出す活動を女性の芸術家や作家が始めている。今回の革命前後で女性を取り巻く環境は全く変わっていないが、女性が自分達の表現をし、恐れずに意見を述べるようになったことは成果の一つである。次に必要なのは政治的ではなく文化的な革命であり、特に女性教育が変わらなければならな
いと述べ、講演を終えた。
 続いて岡氏がコメントした。エジプトは19世紀半ばに英仏の植民地状態になり、1882年、1919年、1952年には独立を、2011年には独裁政権の打倒を求め革命が起こってきた。
 ラティーファ・ザイヤートの小説では、家父長主義的社会で抑圧されている女性の解放が英国の軍事的な植民地支配の下で民族的な自立性を奪われている祖国の解放と重ね合わされて描かれる。この種の描写はエジプトに限らずモロッコのライラ・アブーゼードやファティマ・メルニーシー、パレスチナのサハル・ハリーフェらの著作、またミシェル・クレイフィら男性にも共有されている。しかし日本の読者は、女性の解放は読み取るがナショナルな解放はその背景としてしか受けとめない。これは日本が植民地支配をする側であった歴史的経験が作品の読みを規定しているためだろう。ナワル・エル・サーダウィは社会主義者の観点から階級による抑圧、そしてサバルタン女性の問題を描く。つまりエリート女性がいかにサバルタン女性をインフォーマントとして自らが社会的に権力を持つための資源にしているかというその搾取まで暴く。またアリーファ・リファートは初等教育しか受けておらず、自身と同じ普通のエジプト人女性、その女性がイスラームをどう生きているのかを描いている。
 最後に氏は、講演を貫くテーマがアラビア語のワタン(祖国)だとする。エジプトは1952年の革命で植民地支配からは解放されたが、その後も独裁が続き、決してワタンは自分達のものにはなっていない。ワタンの解放とは外国の支配からの解放だけではなく、社会で女性の権利が同等に認められない限り完全に実現しないと女性は戦いを続けていると述べた。
 この後、参加者との質疑応答の時間がもたれ、盛況のうちに終了した。
(CISMOR特別研究員 朝香知己)
 
※入場無料、事前申込不要
※英語講演、逐次通訳あり

【主催】同志社大学 一神教学際研究センター(CISMOR)
【共催】同志社大学神学部・神学研究科
20150214 講演会プログラム