同志社大学 一神教学際研究センター CISMOR

> 公開講演会 >

イランの外交専門家が語る『イランの核開発と核不拡散問題』

公開講演会

イランの外交専門家が語る『イランの核開発と核不拡散問題』

日時: 2005年07月30日(土)午後2時~4時
場所: 同志社大学 今出川キャンパス 神学館 礼拝堂
講師: ナーセル・サガフィー・アーメリー
(安全保障問題アナリスト、元イラン・イスラーム共和国外交官)
要旨:
核不拡散条約(NPT)に記されている核不拡散体制の歴史上決定的かつ重大な時期に、イランの核開発計画に関する疑惑が生じている。
イランの核開発計画は2年前から多くの注目を集めるようになったが、政治的理由からこの問題は客観的にも公平にも扱われてはいない。時には誤解から、イランが北朝鮮やリビアと同等に論じられることさえある。イランはNPTの発効時に調印を済ませた信頼できる誠実なNPT加盟国である。
イランの核開発計画に対する本格的な疑念が一段と強くなったのは、イランが核燃料サイクル分野の新しい技術を習得したことが明らかになった2002年後半のことであった。イランが核兵器用物質の製造を可能にする「突破口的能力」を開発することを決めたという疑惑もあった。そのような能力があれば、ゆくゆくはNPTを脱退し半年か一年で核兵器を完成させることも可能になる。
現在イランはロシアの援助のもと、ブシェールに1,000メガワットの原子力発電所を建設中である。このほかのイランの各研究施設としては、ナタンツ(ナターンズ)にウラン濃縮プラント、アラクに重水製造施設がある。こうした施設はまだ運転を開始していないが、すべてIAEAの保障措置の対象となっている。イランの原子力計画に対する批判の主な論点は、イランには石油や天然ガスの資源が豊富にあるため原子力を必要としないというものだ。ところが、イギリス、カナダ、ロシアはいずれも石油輸出国であるにもかかわらず、その電力需要の大部分を原子力に依存している。
同様に、原子炉があるとイランの科学者が核兵器の製造方法を見に付けることになるという米国の主張にもあまり説得力がない。NPTのもとでイランは、ウラン濃縮施設などの核関連施設を合法的に建設することを認められている。イランは、自国のウラン濃縮関連活動は完全に合法的なものであり、原子炉に供給する燃料を確保するために必要であるという主張を続けている。
IAEAの査察では、イランの国際公約のいかなる条項の違反も見つかっていない、ということは特筆すべきである。以上のことから、根本的な問題は法的な細則に関わるものではなく、信用や信頼の問題であり、特に米国の対イラン政策に関連する信用や信頼の問題であることは明らかだ。

(ナーセル・サガフィー・アーメリー)
一神教学際研究センター・神学部・神学研究科共催
当日配布のプログラム
『2005年度 研究成果報告書』p.525-533より抜粋