同志社大学 一神教学際研究センター CISMOR

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現代世界におけるムスリム女性

公開講演会

第1プロジェクト 公開講演会

現代世界におけるムスリム女性
Muslim Women in the Contemporary World

日時: 2011年10月22日(土)13:30-15:30
場所: 同志社大学同志社大学今出川キャンパス 神学館3階 礼拝堂
講師: サラ・A・ビン・ジャラウィ・アール・サウード王女殿下
(UAE, Prince Abdulmohsin Bin Jalawi Center for Research & Islamic Studies所長)
要旨:
 本講演において王女殿下は、女性に関するイスラームの理想と現状について説明されると共に、現代イスラーム教徒女性の状況を近代化の問題という側面から分析された。
 イスラームにおける人権は、アッラーに基づくものであり、人間の考え出した思想に依存しているものではない。それは自由、公正、諸権利(人権)、平等の四つを土台とし、また神を崇拝することの一部と考えられるゆえに、ないがしろにすることは許されない。そしてイスラームは人権を呼びかけるだけではなく、イスラームの律法を通じてそれを保護するところまで行なうものである。またイスラームは権利と義務において男性と女性を区別するものではなく、男性と女性全てを人間として神によって尊厳あるべきものとされたとみなす。そこで重要であるのは、自由と責任の連携、公正と平等の連携、権利と義務の連携の三つである。そしてイスラームが人間に対して一番重要としている権利は自由である。自由は意志と関係するものであり、意志とは選択を意味し、選択とはその選択の結果を受け入れ、それに責任を持つということである。女性の権利に関しては、結婚相手の選択の自由があり、教育の権利も与えられていると同時に義務とされる。労働の権利に関しても一部の条件や禁止等はあるが一般に認められている。また経済権、財産権に関しては財産の処分や所有に関して男性との間に差別は無く、公共的な生活に関する参画の権利に関しても、社会の建設における男性と女性の役割は平等であるとされる。
 しかしこのようなイスラームの掲げる永遠の理想があると同時に、現代イスラーム教徒女性の状況は良くないものであると言うことも出来る。そのような困難な現状の出現は、イスラーム社会がかつてヨーロッパ諸国の植民地下に入り、思想、政治、経済等の様々な側面において後進性の時代を経験してしまったためであり、その結果、イスラームの尊重する女性の価値は、実際に適用されないものになったのである。そして現在、女性は不正に扱われていると、社会における能動的な参画によって女性の本質を実現したいと感じている。ただ、女性の価値やあるべき姿に対して今まで必ずしも十分な配慮を払わずに女性の自己実現が求められているという面もある。
 そして現在、イスラーム世界においてその固有性の保持をめぐって社会は三つに分かれている。第一は過去を堅持し開放を拒絶するもの、第二は世界と繋がるために放棄すべきでないものを放棄してしまうもの、第三は、取捨選択するにあたり特に原則無しに行うものである。そしてこの状態は女性において広く現れており、その結果、女性のアイデンティティが明らかに無くなってきている。女性にとってこのアイデンティティは宗教、文明などであるが、現在、特に若い人達を中心にそれを軽視し、他の自分達のものでない文化を着ようとする傾向がある。特に報道はそのような方向を先導し、それによりイスラーム教徒女性の価値観に対して疑念を抱かせている。他の文化が喧伝され、イスラーム的な価値観を溶かそうとする行いがあり、他人に依存するような思想を強化し、消費文化を広め、そして女性が消費文化のための手段とされるのである。このように物質的な側面が強調されるかわりに、精神的な側面が軽視されるようになっていることは、現代のイスラーム教徒女性に関わる非常に大きな問題なのである。
 講演会の後、非公開で行われた研究会においては、Mesfer Ali Mohammed Al-Qahtani博士が人権とイスラーム法の関係について発題し、イスラームにおいて人間の尊厳は神的起源を有するものであり、本来イスラーム法と人権概念は共存するものであると指摘した。このような発題の後、欧米の人権とイスラーム的人権の相違に関して、またサウジアラビアの人権状況などをめぐって参加者による活発な議論が展開された。

(CISMOR共同研究員 朝香知己)
※アラビア語講演・逐次通訳あり
※入場無料・事前申込不要
【主催】同志社大学一神教学際研究センター
【共催】同志社大学神学部・神学研究科
講演会プログラム