同志社大学 一神教学際研究センター CISMOR

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国際学会 “Police, Internal Security and community”

公開講演会

国際学会 “Police, Internal Security and community”

日時: 2016年03月18日(金)10:30-18:00
場所: ワークショップ:至誠館3階会議室
基調講演:同志社大学今出川キャンパス 神学館チャペル
(京都市営地下鉄烏丸線「今出川駅」下車3番出口徒歩3分)
講師: ■第一部 ワークショップ
1.MS. MICHELE GREGORIO(Exective Manager -IPSA)
2.吉村 郁也  元警察庁外事情報部国際テロ対策課課長補佐
(現株式会社グローカル・ビジョン代表、熊本県政策参与)
3.MR. TORES SMITH(Regional Board Member - American Region, IPSA)
4.宮坂 直史  防衛大学校 国際関係学科教授
5.DR. MUSAED AL NAJJAR(Regional Board Member - Asian region, IPSA)
6.DR. MOHAMMED OUDAIMAH 東京大学 非常勤講師
7.MR. SAMEER ABDELMOTTLEP(ロサンゼルス市警察 警察官)

■第二部 基調講演
マムドゥフ・アブドゥルムッタリブ
(IPSA (International Police Science Association)議長)
要旨:
■第二部 基調講演
【時 間】16:00~18:00 
【会 場】同志社大学 今出川キャンパス 神学館チャペル
【テーマ】「社会の中の国際テロ -セカンド・ステージ-」
【講 師】マムドゥフ・アブドゥルムッタリブ 氏( IPSA議長)

 Abdelmottlep氏は、テロ事件と殺人などの凶悪犯罪を統計資料から比較分析しながら、同時に二つの犯罪の動機の違いを基に論を進めていく。
 国際テロリズムを学問的に扱うことは難しい。なぜならテロの定義は250近くあり、国際的に統一された定義が存在しないからだ。だが異なる定義から導出されるものがある。それはテロとは暴力的破壊行為であり、宣伝目的を含めて様々な目的で行われる。その背景として政治的、社会的、思想的なものがあるものとも見られる。テロリストたちの目的は、テロによる最大の効果を生み出すことにある。その効果とは人々に恐怖と不安を与えることである。現象的には暴力的な、過激な、極端な行為とすることで概ね一致している。
 テロに関する統計分析によれば、テロが行われている場所は中東地域が圧倒的に多い。またその犠牲者の約70%は政府関係者である。2015年の発生率は前年比で80%増加している。しかし通常の殺人や傷害による犠牲者とテロの犠牲者の数を比べるとテロの方がはるかに少なく、テロ行為が社会にとって最も危険とは言えない。
 国際的なテロ組織の一つはナイジェリアのボコ・ハラムであり、2015年に発生したテロの77%を行った。それと比較するとイスラム国など他の組織によるものは少ないが、メディアではイスラム国の方がはるかに大きく取り扱われ、国際的に影響力を与えている。またテロ行為の92%は政治的なものである。現代のテロは第四世代の戦争と呼ばれが、イエメン、シリア、イラク、ナイジェリア、アフガニスタンなどで多発している。
 テロの参加者や逮捕者約2千名に行われた調査では、多様な国や人種、主に男性、殆どは人格的に異常のない人々で、かつ教育を受け、職業を有しており、貧困ゆえにテロ行為を行ったのではない。殆どはムスリムだがその大多数はバランスのとれたイスラーム理解をしていなかった。また様々なメディアなどの情報を通じてそこに惹かれていったという。
 テロに加わった主な動機は、第一にアフガン戦争からの帰還者、第二に自己のアイデンティティ捜し、第三にイスラム国が財政的に非常に豊かであり、参加に経済的魅力があるという意味での経済的理由、第四に仕事を得るために加わる人達もいた。つまりイスラム原理主義に教条的、思想的に固執してイスラム国に参加したのではない。
 また、政治的避難民とテロ行為の実行との強い関係性を証明するような研究結果は今のところ無い。テロ対策への政府の経済的負担は、通常犯罪の対策費用と比べて決して異常に高いわけではない。攻撃の対象では宗教関連は非常に少なく、最多は私的財産、それから軍や警察、経済的施設となっている。テロ組織に参加した人が帰国した後の対応が悪い場合、再び彼らをテロへと向かわせるとの調査結果もあり、サウジアラビアなどは戻ってきた人に意識面での教育や指導も行っている。
 UAEでは実際のテロ事件への対応と全体的な対応の二つの対策をとっている。テロに対抗するには国際的、集団的な対抗措置がとられなければならず、テロ対策は全体像を考え、統合的な形で対策が行わなければならない。また寛容や公平、共生など対話的なものも対策の一つになる。対テロ戦略構想は、法的対応、財政的対応、文化的な価値の認識と啓蒙、国際協力の四つの要素を満たさなければならない。そして今後テロが起こった際にとるべき行動として、国際的にどのように協力、連携するのかが重要となる。
 講演後、Samir Nouh氏のコメントおよび参加者との質疑応答がなされた。
(CISMOR特別研究員 朝香知己)

【主催】IPSA, CISMOR
【共催】同志社大学神学部・神学研究科
20160318プログラム
20160318基調講演ポスター