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2016米国大統領選挙と米国内政・外交の展望

公開講演会

2016米国大統領選挙と米国内政・外交の展望
2016 Presidential Election and the Future of U.S. Domestic & Foreign Policy

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日時: 2016年07月20日(水)16:40-18:15
場所: 同志社大学今出川キャンパス良心館 RY305教室
講師: 講演者:エリオット・エイブラムス(外交問題評議会 中東研究担当シニアフェロー)
モデレーター:阿川尚之(同志社大学特別客員教授)
ディスカッサント:村田 晃嗣(同志社大学法学部教授)
要旨:
 エイブラムス氏によれば、1990年のイラクによるクウェート侵攻は米国の外交政策に大きな影響を与えた。湾岸戦争以後、米国政府はそれ以前とは異なり常に中東に最大の関心を寄せ、米軍は駐留し続けた。それに対しオバマは米軍を撤退させる政策を掲げ、2008年に大統領に就任した。そしてアジア重視政策がとられたが、主な狙いは米国の海外におけるコミットメントの削減と米国の役割の再定義だった。
 外交問題評議会のS・セスタノビッチは、米国の外交政策は関与と非関与の間を常に振り子のように揺れ続けていると述べているが、私の考えでは現在は振り子が振り切った状態にある。オバマ政権下で削減を続けた軍事費は、次期大統領下で増大するだろう。最新の世論調査では、軍事費拡大に対する国民の支持は9・11以来かつてないほど高まっており、実際に中東でのISへの強硬姿勢は既に始まっている。ここで学ぶべき教訓は米国のリーダーシップはやはり必要だということであり、トランプもクリントンもそれを認識している。イスラムのテロの脅威があり、それが米国にも向けられている限り、たとえ米国が世界でその関与を弱めようとしても不可能である。経済的なリーダーシップに関しては、トランプは米国の雇用を奪ったとしてグローバル化や通商条約を非難するがそれは誤りであり、実際に雇用を奪ったのはオートメーション化、近代化である。ただしグローバル化に敗者と弱者がいることは確かであり、また彼の発言は実際以上に過激にとられている面もある。
 最近の世論調査によれば、米国人の多くは米国が唯一の軍事超大国として残ることを支持しており、また米国が世界最大の経済大国であるべきだと考えている。米国がその地位を維持できるかについては、私は米国が他国よりもはるかに有利な立場にあると考える。米国は毎年100万人という世界最大の移民を引き付け、その多くはインドや中国などの最も優秀で聡明な若者である。彼らは経済に活力と独創力をもたらし、また重大な知的、科学的、金融的な資産を持ってくる。また移民は人口動態や出生率にも影響を与える。他の先進国とは逆に米国では今後も人口の増加が予測されている。
 大国として台頭してきた中国が世界のリーダーとして米国に取って代わるとの考えがあるが、中国の人口は高齢化し今後減少してくる。また中国は地方の貧しい地域に6億5千万人が住んでおり、彼らの一人当たりのGDPは米国のそれの12%である。他にもGDP対比の政府債務残高の大幅な上昇や国有企業の負債の急速な増加、汚職、深刻な大気・水質汚染、貧富の差などが政治的、社会的な問題となり、激変をもたらすかもしれない。対して米国は最大の外国直接投資先であり、軍事費は他国を大幅に上回る。また世界の同盟体系の一部である。そして近年、石油や天然ガスなどの主要なエネルギー生産国に返り咲いた。
 選挙戦でサンダースやトランプが支持を集めた理由は、私見では、一つには2008年以来の経済成長の低迷である。両グループはワシントンの政治家が民意とかけ離れており、平均的な米国人の利益を求めていないと感じており、経済の問題に基づく怒りがある。もう一つはポリティカル・コレクトネスに関係している。多くの米国人はそれによって伝統的な態度や文化が攻撃され、非合法化されていると感じており、この怒りがトランプの支持に繋がっている。また経済的、文化的な問題の一つの主要な側面としてエリート主義に対する不満がある。両党のリーダーはこの警告に耳を傾け、再び信頼を勝ち取る努力をすべきである。
 米国には過去数十年にわたり多くの間違いがあり、また将来間違わないと保証することも出来ないが、にもかかわらず米国は今後も経済的、軍事的な強国、また深く関与した強力な同盟国であり続け、我々にこれまで繁栄をもたらしてきた国際秩序を守り続けるだろうと述べ、氏は講演を締めくくった。
 講演の後、阿川氏をモデレーター、村田氏をディスカッサントに迎えてのディスカッションと会場との質疑応答が行われた。
(CISMOR特別研究員 朝香知己)
※日英同時通訳
※入場無料・要申込

【参加申込み】
氏名・所属〔任意〕を明記のうえ、同志社大学一神教学際研究センターへメールでお申込みください。
申込先:info@cismor.jp
申し込締切:2016年7月18日(月)

主催:
独立行政法人国際交流基金日米センター(CGP)
同志社大学市民外交研究センター(DCCD)
同志社大学一神教学際研究センター(CISMOR)
米国ユダヤ人協会(AJC)
20160720ポスター
配布資料:「イスラエルとアラブ・イスラエル紛争」デヴィッド・ハリス(米国ユダヤ人協会理事長)