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Japan Matters for America/ America Matters for Japan ―日米関係の歴史と課題

公開講演会

公開セミナー(共同主催:笹川平和財団/イーストウェストセンター/アメリカ研究所部門研究3)

Japan Matters for America/ America Matters for Japan ―日米関係の歴史と課題

日時: 2010年11月06日(土)15:00−17:00
場所: 同志社大学新町キャンパス 尋真館2階 Z21教室
講師: Satu Limaye(イーストウェストセンター・ワシントンオフィスディレクター)
林 敏彦(同志社大学総合政策研究科教授)
Andrew Oros(ワシントンカレッジ准教授)
[モデレーター]
村田晃嗣(同志社大学教授)
要旨:
 三人のパネリストを迎えた本シンポジウムのトピックは多岐にわたったが、共通した大きなテーマは主に三つあった。1つ目は、日米安全保障条約の改定50周年を迎えた日米関係の現状を、いかに認識するかである。特にこの点については、共催団体の一つであるイースト・ウェストセンター(米国・ハワイ、以下EWC)が作成した冊子、Japan Matters for America / America Matters for Japan(以下JMA)が、議論の基盤となる極めて貴重なデータと知見を提供した。2つ目は、中国の台頭など、日米関係を取り巻く環境の変化に、両国がどのように対応するべきなのかということである。3つ目は将来の日米関係をどう展望し、また希望するかということであった。
 まずEWCワシントン・オフィス代表のサトゥー・リメイェ博士が、JMAに示されている豊富なデータと図表をもとに、強固な日米間の経済的・文化的・人的な相互依存関係を説明した。とくに強調されたのは、県・州レベルの経済でも両国間の貿易・投資が大きなウェイトを占めている事実である。これらのデータをもとに博士は、①普天間問題など深刻な問題もあるが、それは広範で重層的な両国関係の一部にすぎないことを正しく理解することの重要性と、②こうした強固な日米関係の一層の発展のために、過度の悲観主義や自己満足に陥ってはならいないことを説得的に論じた。
 経済学を専門とする林敏彦同志社大学教授は、JMAに加えて、自ら整理したデータをもとに、①米国の政治周期(理想主義の台頭と退潮の30年周期の循環)の変化と、②日米経済関係の質的変化を論じた。まず米国の国内政治では、かつては約20年持続できた理想主義が、最近では10年しかもたなくなっていることが指摘された。ただし経済的指標からも、人口学的指標からも「アメリカの時代」はこれからも続くとする。また過去の日米経済摩擦を振り返って、結果的に両国関係のレベルアップにつながったと評価し、基本的な価値観を共有する日米は、グローバルな問題群に緊密に協同して対処できるように、もう一段のレベルアップを目指すべきだと論じた。
 日米の安全保障関係を専門とするワシントンカレッジのアンドリュー・オロス准教授が強調したのは、人的交流の重要性である。このため、日本人留学生の減少や、外国人留学生を対象とした日本の政府予算の削減傾向に警鐘を鳴らした。また日米関係を長年連れ添った夫婦関係にたとえ、両国のパートナーシップの目的と意義を定期的に再確認する作業が必要であること、そして、未来に取り組むべき共通のプロジェクトを新たに見つけることの重要性が主張された。
 続いてパネルディスカッションが行われ、モデレーターの村田晃嗣同志社大学教授から3人のパネリストに対して、①11月2日に実施された米・中間選挙の米国外交と日米関係への影響と、②10年後の日米関係をどう予想(想像)するかが質問され、活発な議論が行われた。リメイェ博士は、日米関係の安定性を前提に、中間選挙がただちに両国関係に深刻な影響を及ぼすことはないだろうことを論じ、また関係の外側で急速に変化するグローバルな政治・経済構造への適応を、今後10年の日米関係の鍵としてあげた。林教授は、オバマ人気の失速は、米国の政治周期の短期化の証左であることや、単なる予測よりも、10年後に実現を希望する日米関係を思い描いた上で、その実現に必要な施策を逆算して実施していくことの重要性を強調した。そしてオロス准教授は、日本が内向きにならず、地域的あるいはグローバルな安全保障上の役割をこれまで以上に積極的に担う必要性を説いた。   

(CISMOR特別研究員 中谷 直司)
*入場無料、事前申込不要

【共同主催】
笹川平和財団
同志社大学 一神教学際研究センター(CISMOR)
イーストウェストセンター(EWC)
同志社大学 アメリカ研究所 部門研究3
公開セミナープログラム