同志社大学 一神教学際研究センター CISMOR

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パレスチナ問題とイスラム過激派の動向:現況と課題

公開講演会

パレスチナ問題とイスラム過激派の動向:現況と課題

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日時: 2015年06月03日(水)16:40-18:15
場所: 同志社大学今出川キャンパス同志社礼拝堂
(京都市営地下鉄烏丸線「今出川駅」下車3番出口徒歩3分)
講師: ムハンマド・ダラグメ(AP通信記者/パレスチナ・ラマッラー駐在)
要旨:
 Daraghmeh氏は、パレスチナ情勢について、ガザ地区の状況を踏まえつつ説明した。
 1990年代にパレスチナの指導者であったヤセル・アラファト議長がイスラエルと政治交渉していた。その当時ハマスのイスラーム民族運動はパレスチナの辺縁に存在するに過ぎず、世論調査でも12%の支持率しか有していなかった。
しかし、1年を経ずして、この運動が主流の力を持つようになる。なぜなら、イスラエルはパレスチナに対し独立を認めないことに人々が気付いたからであった。その結果、第2のインティファーダとして知られる4年間の闘争が始まることになる。2007年になると、このハマスがガザ地区を支配するようになり、独自のイスラーム政府を打ち立てるが、その過程はパレスチナ政権の中枢を担っていたファタハとの厳しい抗争の結果であった。このガザ地区のハマス支配に対し、イスラエルは非常に厳しい封鎖をするようなり、両者の緊張関係は恒常的なものとなっていった。ハマスは強力な推定3万人の戦闘員をもつ組織だが、西側諸国にはテログループと数えられた。この封鎖と、それによってもたらされた緊張状態により、その後、2008年、2012年、2014年に、イスラエル・パレスチナ戦争が勃発することになった。
 もう一つのイスラーム主義運動である、イスラーム聖戦機構、イスラミック・ジハードが、ハマスに次いでガザ地区で勢力を拡大ししている。イスラミック・ジハードは約1万2千人の戦闘員をもつ武装勢力である。上記二つの組織は
IS(イスラミック・ステート)やアルカイダと比べると穏健派と考えられている。この二つの勢力があったことにより、パレスチナはISやアルカイダのような過激派運動から護られることになった。
 しかし、ISやアルカイダのようなイスラーム過激派運動がパレスチナにおいて勢力を拡大する3つの要因がある。1つ目の要因は、イスラエルとの間の和平プロセスが行き詰まることで、2つ目の要因は、現在イスラエルとエジプトによる経済封鎖である。そして最重要となる可能性をもつ3つ目の要因は、パレスチナ近隣のシリアとイラクにおけるISの勝利である。パレスチナにおいても、シリアやイラクにおけるISの勝利が支持者を引き付けていることは事実である。実際、この動きに歯止めをかける要因も存在する。1つ目の要因は、パレスチナ人は血に染まった犠牲を伴う長い紛争に疲弊しており、自分たちの土地を解放する手段としての武力闘争に対して信念を失っていることである。人々は、イラク、シリア、リビア、イエメンで起きている流血と残虐な事件を見て、自分たちの土地でそのようなことが起きてほしくないと考えている。2つ目の要因は、パレスチナは長い独自の政治的な経験と歴史をもち、その経験によってISのような新しい冒険に対する免疫ができているということである。3つ目の要因は、パレスチナには内部の派閥抗争がない点である。つまり、他国で見られるようなスンナ派とシーア派の対立はパレスチナに存在しないことである。イラク、シリア、レバノン、イエメンにおいて、ISのような過激派イスラーム運動が急速に登場してきた背景にはそのような内部の派閥抗争がある。4つ目の要因は、ISやアルカイダのような過激派は、優先順位を高いものとしてパレスチナ問題を扱わず、彼らの主要関心事は、イラクやシリアにおける派閥抗争としている点である。
 最近のある世論調査では、ヨルダン川西岸に住む人々のうち、ISがイスラーム主義を代表していると考えるのは、3%に過ぎなかった。同じ世論調査を、非常に厳しい状況に置かれているガザ地区の人々にしたところ、13%の人々が
ISは真のイスラーム主義を代表していると答えている。このことから、もし今後もイスラエルとエジプトによるガザ地区に対する封鎖が続けば、ISが勢力を拡大する可能性はある。
 アメリカの組織である、中東難民援助ANERAの総裁は、貧血に苦しむガザ地区に住む子供の数が2014年の夏の19%に比べると、現在は31%まで上昇していると報告した。またANERAは現在、西洋諸国からガザ地区への援助資金を集めるのに大きな困難に直面している。そしてガザ地区の経済が回復しておらず、その市民の70%が仕事もない状況にある。ガザ地区においてISが勢力を拡大する可能性は存在する。その可能性は今後ハマスがイスラエルやエジプト、西側諸国とどういう関係を展開していくかに依存している。
(CISMOR特別研究員 平岡光太郎)
※英語講演・逐次通訳あり
※入場無料・事前申込不要

【主催】笹川平和財団 笹川中東イスラム基金  
    同志社大学一神教学際研究センター
【共催】同志社大学神学部・神学研究科
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20150603ポスター