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オマーン王立大学准教授による信仰学講義終了
2016年06月03日
同志社大学大学院神学研究科では、2016年5月1日から6月1日までの期間、同研究科神学集中講義として、オマーン王立大学准教授のスレイマン博士(SULAIMAN ALSHUEILI, Assistant Professor in Tafsir and Quranic Sciences, Department of Islamic Sciences, College of Educational Sultan Qaboos University, Oman)をお招きして、「神を視ることをめぐる諸問題」の講義を、火曜日の16:40~19:55、水曜日09:00~12:10の時間で4週間行った。
イスラーム学の基本は、信仰学(アキーダ)、法学(シャリーア)、倫理学(アフラーク)から成立しているが、信仰学の探求・研究は政治的対立を招くばかりであったため、神に委ねるとしてスンニー派やシーア派のほとんどがアッバース朝以降、関心を払わないできた。
しかながら、イバード派は今日もなお、唯一神のメッセージである『クルアーン』を信仰の根本とし、その理解に集中し、信仰に直接的に関係ない部分には理性的に心広く対応してきた。そうした結果、宗教的寛容が醸成されたとも言える。スンニー派が探求を止めた今も、イバード派は信仰学を中心として、イスラームを維持している。
今回の講義では、講義と活発な質疑応答の中で、イスラームの信仰をめぐる論点が明らかにされた。
講義内容は以下の通りであった。
テーマ |
講義回数 |
信仰告白に関する講義 1.イスラーム教徒の信仰告白 「唯一神であるアッラー以外に神はいない、ムハンマドはアッラーの使徒である」 2.心による信仰 3.信仰実践:イスラーム教徒に課された信仰実践。 4.人はこの信仰告白文言を口頭で述べ、イスラーム教に入信する。 |
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アッラーの属性について: 分類 1)そうでなければならない属性、2)そうであろうとの属性、3)不可能な、有り得ない属性 2)上記属性と、アッラー御自身との関係について |
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『クルアーン』の創造について 1.『クルアーン』の意味 2.創造の意味 3.『クルアーン』の創造を主張する人たちの根拠 4.前記を否定する人たちの根拠 5.正しい意見へ至るための諸見解に関する議論 |
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神を目視することについて 1. 現世と来世で、神の目視は可能か? 2. 目視を可能とする人々の根拠 3. 目視を否定する人々の根拠 4. 正しい意見へ至るための諸見解に関する議論 |
2 |
業火の懲罰を受ける大罪人は、そこに永久に留まるのかについて 1. 大罪の定義 2. 大罪を犯した人々とは誰か? 3. 大罪人の現世での懲罰 4. 来世での大罪人たちの運命に関するイスラーム共同体内の意見の対立 5. 業火から解放されることを主張する人々の根拠 6. 大罪人たちは業火の懲罰の中に永久に留まると主張する人たちの根拠 |
2 |
唯一神への執り成しについて 1. 執り成しと、その分類 2. 大罪人たちのための執り成しを主張する人々の根拠 3. 大罪人に執り成しはないと主張する人々の根拠 4. 諸見解と、双方が依拠する根拠についての議論 |
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ムフカム(解釈の余地のなく廃棄されないこと)と、ムタシャービフ(曖昧さが残り、確定できないこと)について(『クルアーン』の明文をめぐって) 1.ムフカムの定義 2.ムタシャービフの定義 3.確定できない(神の)属性についてイスラーム共同体での意見の対立 4.補うものを主張する人たちの根拠 5.解釈、具現化を主張する人たちの根拠 |
1 |
宿命と運命について 1.宿命の定義 2.運命の定義 3.神の裁きと運命についてイスラーム共同体での意見の対立 4.運命について主張するムゥタズィラ、そして確定的運命についての議論 |
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天使たちと、諸啓示書、神の使徒たちの存在を信じることについて 1.神の使徒、預言者、天使、そしてそれぞれの属性の定義 2.天の諸書についての定義 |
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道、天秤、業火の懲罰 1.道、天秤、業火懲罰の理解 2.それについて諸学派の意見 |
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最後の審判の時 議論事項: 1.大ペテン師ダッジャールの出ていくこと 2.獣の出て行くこと 3.イエスの降臨 4.待ちわびた救世主マハディの出現 |
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イバード派の紹介と形成 1.イバードとは 2.イバード派指導者群像 3.バスラ・イバード派の形成 4.イバード派学派のオマーン、及びマグリブ(主としてアルジェリア)への浸透 5.イバード派とハワーリジュ派の違いと特徴 |
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まとめ |
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また、5月12日(16:40-18:10)には、同博士による一般公開講演会「神を視ることについて」が神学館チャペルで行われた。