同志社大学 一神教学際研究センター CISMOR

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研究

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ユダヤ思想における共存可能なナショナル・アイデンティティ構築の試み(イスラエル)

研究

ユダヤ思想における共存可能なナショナル・アイデンティティ構築の試み(イスラエル)

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イスラエルは、イスラエル・パレスチナ紛争など、一神教間の紛争解決を考える際の要地である。本センターと密接な研究連携が進んでいるヘブライ大学はユダヤ学関係の研究の世界的最高峰であるため、本課題はヘブライ大学において共同研究を行う。 

ヘブライ大学

 

研究会

国際ワークショップ

“Theocracy” and “Nation” in Jewish Thought: Past and Present

日時:2013年12月30日 9:30 – 17:00
会場:イスラエル、エルサレム

“Theocracy” and “Nation” in Jewish Thought: Past and Present
 

国際ワークショップ

Interpretations of Traditions: Maimonides, Spinoza, Buber, Levinas and After

日時:2012年8月27日 10:00-17:00
会場:イスラエル、エルサレム
国際ワークショップ報告書 

Interpretations of Traditions: Maimonides, Spinoza, Buber, Levinas and After
Interpretations of Traditions: Maimonides, Spinoza, Buber, Levinas and After

 

研究ノート 

派遣者:平岡光太郎(同志社大学 神学研究科後期課程)

ユダヤ思想における共存可能なナショナル・アイデンティティ構築の試み

ユダヤ思想における共存可能なナショナル・アイデンティティ構築の試み
研究目的
本共同研究では、現代ユダヤ思想家の重要人物の一人であるマルティン・ブーバー(Martin Buber, 1878-1965)を取り上げる。ブーバーによる、聖書をはじめとするユダヤ教文書ならびに中世ユダヤ教徒や近代ユダヤ人の文書の注解である『民と地のあいだ』を対象とし、そこに現れる共存可能なナショナル・アイデンティティ理解を明らかにすることを目的とする。
 
研究方法
本邦のブーバー研究において、哲学領域での研究はすでに多くなされているが、聖書を含む、政治思想理解に関してほとんど研究がなされていない。本共同研究では聖書をはじめとするユダヤ教伝統や近代ユダヤ人の文書を扱うブーバーの『民と地のあいだ』の読解を通し、ブーバーの共存可能なナショナル・アイデンティティ理解を明らかにする。
一神教学際研究センター・若手研究会では、平成25年4月現在まで、京都大学のブーバー研究者らと共に『民と地のあいだ』の研究会を行っている。本邦ではこの若手研究会を基盤としつつ、派遣予定者がイスラエルにおいてユダヤ思想を専門とするゼエブ・ハーヴィー教授とモシェ・ハルバータル教授より指導を受けつつ、意見交換する。ユダヤ思想の問題をイスラエル国家の枠組みのみでなく、ディアスポラのユダヤ教コミュニティの視点も取り込むことによって補足することは重要な作業となるため、派遣予定者がレオ・ベック・カレッジの教授陣と意見交換する。本研究の到達目標は、国際ワークショップなどを企画し、その特集を組むなどして成果を活字媒体にて発信することである。
 
研究内容
『民と地のあいだ』の冒頭部分において、ブーバーは、イスラエルの民とイスラエルの地が自身で存立しているのでなく、それらは連関的枠組みにあると理解する。また彼はシオンの理念の独自性を、そのナショナルな理念がその民の名ではなく、地名で呼ばれることに見出す。ブーバーの理解には、イスラエルの民のナショナリズムを制限する機能があるように思われる。ナショナリズムが独り善がりになり、絶対化することを認めない、このような思想は現代においても一定の価値がある。また深く自身のユダヤのナショナリティを考察すると同時にアラブ人へ言及する姿勢は、ナショナリティの在り方として重要と思われる。「ナショナリズムに制限を要求するナショナリスト」という表現がブーバーを評するに妥当と思われる。ブーバーの姿勢において、ナショナリティは民族的であり宗教的なものである。『民と地のあいだ』の冒頭部分において、彼のナショナリティ理解には、国家の意味を見つけることができない。
参考文献
Martin Buber, Bein ʻam le-artso (Jerusalem: Schocken Publishing House, 1944: in Hebrew).
Martin Buber, Israel und Palӓstina (Zürich: Artemis-Verlag, 1950).
Martin Buber, Stanley Godman (translator), Israel and Palestine: The History of an Idea (London: East and West Library, 1952).
Martin Buber, A Land of Two Peoples: Martin Buber on Jews and Arabs (New York: Oxford University Press, 1983).
David Miller, On Nationality (New York: Oxford University Press, 1995).