21世紀COEプログラムによる活動記録
2004年度 第4回研究会
日時: | 2004年11月27日 |
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場所: | 東京・大手町サンスカイルーム |
タイトル: | 米国保守派の支持基盤と宗教右派の位置づけ |
講師: | 中山俊宏 (日本国際問題研究所) |
タイトル: | 分極化するアメリカ―世界との関係を修復できるか |
講師: | 三浦俊章 (朝日新聞) |
要旨: | |
1 中山氏は保守派と宗教右派の関係を歴史的に解き明かした。伝統の浅いアメリカにおける保守主義は、将来のビジョンを提示するという特色を持つ。50年代以降、カウンター・カルチャーに対抗すべく保守勢力は漸進的に宗教右派を政治基盤に取り込んできた。同性愛や中絶問題で、宗教右派はリベラル派に対する反発を強めていく中で、元来、民主党を支持してきたカトリック派の中においても、民主党のリベラルな政策から距離を置き、共和党へ宗旨替えするようになる。こうした動きに呼応し、大統領選挙戦においてもカーター以後、宗教を意識したレトリックが候補者から発せられるようになった。保守派と宗教右派の結びつきに成功したのがレーガンであり、ブッシュ・ジュニアにもその傾向が顕著に見られる。ブッシュ政権は国務省が毎年、宗教の自由に関して出す報告書にも力を入れるようになった。しかし、多様な価値観が混在するアメリカで、宗教右派がいかに結束力を誇っても、その政治的影響力には限界がある。中間層の取り込みが必要不可欠であり、ブッシュも中間層を取り込むことに努めた。一方、民主党は、自身の支持基盤を一部とはいえ、2004年大統領選挙で共和党に切り崩されてしまい、今後党の建て直しに課題を残すことになった。 2 三浦氏は、ブッシュとの関係を踏まえて、パウエル、ライスという新旧国務長官の比較を行い、今後のアメリカ外交を分析した。 パウエルは、ワシントン勤務が多く、政治と軍事の結節点でその能力を発揮してきたが、自身の明確なビジョンを持っているとは言いがたい。パウエルは、国務長官としてイラク戦争に慎重な姿勢を見せたが、国務省の利益を主張していた側面が強い。一方、彼はアファーマティヴ・アクションや銃の規制に賛成するなど穏健で、リベラルでもあった。しかしそれゆえに、1996年の大統領選挙で副大統領候補の呼び声が高かったにもかかわらず、共和党保守派を抑えきれないと判断され、国務長官に就任する。プラグマティストとである彼は、しばしばネオコンとの確執が取りざたされたが、ネオコンのような明確なビジョンを持っておらず、そこに彼の限界があったのでないか。 ライスは、19歳でデンバー大学を卒業した秀才の誉れ高い黒人女性であり、ソ連問題の専門家であった。ライスは自身の見解を明確にすることなく、論争があっても当事者双方がライスを自分たちの味方であると思うようなタイプの人材であり、ブッシュへの忠誠心も高い。こうしたことから彼女によって、アメリカ外交が大きく変化することはなく、むしろイラク問題を含め混沌とするのではないだろうか。 (CISMOR奨励研究員・法学研究科博士後期課程 小出輝章) |
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