同志社大学 一神教学際研究センター CISMOR

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カレーズの会の活動とアフガニスタン復興⽀援

公開講演会

プロジェクト2公開シンポジウム

カレーズの会の活動とアフガニスタン復興⽀援

日時: 2012年04月14日(土)15:00-16:45
場所: 同志社大今出川キャンパス 神学館礼拝堂
講師: レシャード・カレッド(医師、医療法人社団健祉理事長、カレーズの会理事長)
要旨:
 レシャード⽒の講演は、かつての緑豊かで美しいアフガニスタンの写真の説明から始まった。1979年、ソ連軍がこの国に侵攻し、13万⼈の軍が⽀配した。1989年には、ソ連軍が完全撤退したが、この間に100万⼈〜150万⼈が亡くなった。さらに1994年からの内戦、1996年のタリバーン政権成⽴までに50万⼈が亡くなったとされている。加えて、ソ連軍の撤退後、2000万個の地雷が残され、今なお全⼟に800万個残っている。この⼩さな地雷は400円程度で作ることができるが、処理するには10万円もの費⽤が必要とされているのである。もう⼀つの問題は、クラスター爆弾である。中に2000個の⼩さな爆弾が⼊っていて、上空でバラバラになる。不発弾が爆発して⽣産年齢⼈⼝の⼈々が⼿⾜を失ったり、⼦どもたちが負傷している。地雷で被害にあったアフガン⼈を⽀援するために、レシャード⽒は奈良で義⾜を装着することを進めているという。また、劣化ウラン弾によって奇形児の出⽣が7倍に増えたというデータもある。現在においても、アフガニスタンの治安は極めて悪く、今も街中に装甲⾞がいて、⼈びとの活動を抑えている。アフガニスタンの⺠間⼈犠牲者数は、2006年から次第に増え、2011年には3,021⼈にのぼった。
 レシャード⽒のデータによれば、アフガニスタンでは栄養状態の悪い⼦どもが多く、男⼥とも体重が標準値を下回っている。2007年の⼀⼈当たりGNIは250ドル(⽇本39,632ドル)、⼈⼝1000⼈当り乳幼児死亡数165⼈(⽇本1.2⼈)、⼈⼝1000⼈当り5歳未満の死亡数257⼈(⽇本0.7⼈)、10万件当たり妊婦死亡件数1,600件(⽇本35件)。この国では死が⾝近にあるのである。結核もいまだ脅威ある病気の⼀つであり、年間新患者数7万⼈、死亡数2万⼈、新罹患率の⼈⼝10万⼈当り333⼈とされている。
アフガニスタンにおける医師の数は、男性1,598⼈、⼥性605⼈、計2,203⼈とされ、⼈⼝10万⼈当り8.12⼈(⽇本198⼈)の計算になる。医師、医学部が少なく、それも都市部に偏っていることが課題とされる。 初等教育就学率は男性74%、⼥性46%で近年上昇傾向を⾒せているが、中等教育就学率は男性38%、⼥性15%、若者(15〜24歳)の識字率は男性49%、⼥性18%と依然低く、特に⼥性の識字率や就学率の低さが課題である。
 2002年に、レシャード⽒は、⽇本政府の援助を得て、カンダハール地⽅にカレーズの会の診療所をつくった。2011年12⽉までの112ヵ⽉間の患者数は、男性38,210⼈、⼥性168,595⼈、男児40,152⼈、⼥児31,445⼈、計278,702⼈で、成⼈⼥性の罹患率・患者数が⾮常に多いのが特徴である。診察までの待ち時間に、⽣⽔を飲まない、栄養や予防接種の必要といった衛⽣教育もおこなっているという。疾患の種類としては圧倒的に感染症が多く、戦争のためにPTSDを患っている患者も多い。破傷⾵の予防注射を28,532 ⼈分おこなったが、予算的制約から15〜45歳の妊娠の可能性のある⼈に限っている。レシャード⽒は、診療所での診察だけではなく、村へも往診し、予防接種・診察を積極的におこなっている。ただし、治安が悪いために様々な制約があり、診療所に職員が寝泊まりすることができないため、現在お産は昼間だけ受け付けているという。
 さらにレシャード⽒は、⽇本の寺⼦屋をモデルとした学校をつくったが、教師が⾒つけられず、1年間運営することができなかった。現在も教師がほとんどいないという課題があるという。また、治安が悪くなると真っ先に学校が狙われるという問題もある。⽔環境に関しては、今年ようやく、トイレの設置が検討されているが、井⼾を掘る必要もある。地⽅政府が協⼒して設置するはずであったが、なかなか当てにならないのだという。それにもかかわらず、⽣徒数は680名に増え、⼦どもたちが元気に学んでおり、⼤きな希望が持てると述べた。
最後にレシャード⽒は、⽇本の⽀援に期待していると述べ、具体的に次の提⾔を⾏った。①アフガニスタンの治安維持のため、⽇本が東ティモールやカンボジアで実績をあげた経験を⽣かしてほしい。②⺠間の武装解除と職業訓練。アフガニスタンはもともと80%が農業で⾃活していた。地雷がそれを妨げている。③インフラの整備、保健・医療、⼀般教育、雇⽤・農業対策等、地域格差の解消が不可⽋である。格差が治安の悪化を招いている。⽇本はこれらのどの分野においても貢献できる。④⼈材育成のための研修や実習。⑤そして何より、⽇本の世論がアフガニスタンに関⼼を持ち続けることが⼤切である。 (CISMORリサーチアシスタント 佐藤泰彦)
【主催】同志社大学一神教学際研究センター
【共催】同志社大学グローバル・スタディーズ研究科
     同志社大学アフガニスタン平和・開発研究センター
     同志社大学神学部・神学研究科
※入場無料・事前申込不要
講演会プログラム