公開講演会
The 2nd workshop “Oman and Islam”
イスラームについてのオマーンからのメッセージ──寛容・理解・共存
日時: |
2014年06月06日(金)17:00-19:00 |
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場所: |
同志社大学室町キャンパス寒梅館 クローバーホール |
講師: |
【ゲスト】 Dr. Mohammad Al- Mamari(Adviser to the Minister of Awqaf and Religious Affairs、オマーン) 【コメンテーター】 小原 克博(同志社大学神学部教授、一神教学際研究センター長) 【司会】 四戸潤弥(同志社大学神学部教授) |
要旨: | |
本シンポジウムではまず、オマーン国の宗教・ワクフ省顧問であるMohammed Al-Mamari氏よりオマーンの歴史と宗教についてのスピーチが行われた。 オマーンは海洋国家であり、インド洋周辺から中国に至る人々との交流が三千年前から行われてきた。歴史的に見ても、オマーンでは様々な宗教を信仰するコミュニティが存在し、他者を受け入れること、相互理解、平和的共存が実現されていた。紀元前2000年にさかのぼればシュメール文明やインダス文明へ銅の輸出を担っていたマガンの交易商人とはオマーンの人々のことであり、またその後の時代にはオマーン南部の香料が重要な輸出品としてエジプト人やローマ人と取引されていた。19世紀に入るとオマーンの交易拠点はアフリカのザンジバール島まで拡大し、象牙と香辛料が主要な商品として取引され、現代では石油と天然ガスが最も重要な輸出品となっている。そして1970年代以来、カーブース・サイド・アール=サイード国王陛下の主導により、伝統を破壊することなく国家を現代化することを目標として、国家発展のための社会的、政治的政策が取られている。 オマーンのイスラームの受け入れは、預言者ムハンマドが生きていた時代に平和的になされた。西暦629年にオマーンのソファールの二人の王(ジュランダの息子アブドとジャイファー)は、預言者ムハンマドからイスラームへの帰依を熱心に説得する書簡を受け取り、二人は自由意志でイスラームを選択し、信徒となったのである。 イスラームの哲学は宗教的寛容、紛争や暴力の回避という原則に基礎付けられており、オマーンのイスラームの多数派はイバード派であるが、モスクではスンナ派とシーア派の礼拝も行われている。イバード派は常に、攻撃されない限り戦わないことを明確に表明し、神学的な違いのための流血は恥ずべきこととみなしてきたのである。またオマーンではキリスト教徒、ユダヤ教徒、ヒンドゥー教徒、シーク教徒ほかの信徒たちも生活してきた。彼らは何世紀もの間、宗教的寛容の原則に基づき、オマーン社会に受入れられてきたのであり、所属する宗教によって隔離されるようなこともなかった。現在、オマーンの国家の宗教はイスラームだが、基本法において、公共の秩序を混乱させたり紛争を起こしたりしない限りで信教の自由が保障されている。宗教的な集会は、個人の家や政府公認の礼拝所以外の場所では許されていないが、宗教的実践は禁じられていない。 以上のスピーチの後、“Religious Tolerance in Oman”と題されたフィルムが上映され、それに続いて小原克博氏によるコメントがなされた。小原氏は、オマーンのイバード派は少数派ではあるとしても、その寛容の理念・文化は現代の世界へ貢献し得るものであり、日本の平和の文化とも価値観を共有し得るのではないか、またこのような機会を通して自分とは異なる他者に実際に触れ、理解することを通して、他者に単純なラベリングをする誤りを避け、より豊かな寛容の精神を養うことが可能となると指摘した。 その後、参加者との質疑応答の時間が持たれたほか、双方による記念品の交換も行われ、盛況のうちに終了した。またこの後、ワーックショップ会場隣のギャラリーにて開催されていたオマーンやイスラームを紹介する展示の解説も行われた。(CISMOR特別研究員 朝香知己) |
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イスラームとは、どのようなものなのか。昨年度開催した公開講演会「オマーンのイスラーム法学者たちの試み」に続き、第2回目となるこのワークショップでは、寛容・理解・共存をキーワードにして、オマーンにおける伝統や取り組みから、イスラームの実際に触れる機会を提供したいと考えています。 寒梅館地下のギャラリーでは、オマーンの魅力を写真やパネルで紹介します。 ◆ギャラリー展示 「Oman and Islam」 開催期間:6月4日~7日 10:00-18:00(最終日15:00閉場) 場所:同志社大学室町キャンパス寒梅館地下1階ギャラリー ※入場無料、事前申込不要 ※使用言語:英語、日本語 【主催】 Ministry of Awqaf and Religious Affairs, Sultanate of Oman 同志社大学 一神教学際研究センター(CISMOR) |
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20140606 プログラム |