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24年間のアラブ・イスラーム学院の日本でのアラビア語教育とeラーニング

公開講演会

一神教学際研究センター 公開講演会

24年間のアラブ・イスラーム学院の日本でのアラビア語教育とeラーニング

日時: 2006年02月25日(土)午後2時~4時
場所: 同志社大学 今出川キャンパス 扶桑館2階 マルチメディアルーム2
講師: ムハンマド・ハサン・アルジール博士(イマーム・ムハンマド・イブン・サウード・イスラ-ム大学東京分校 アラブ・イスラーム学院長)
要旨:
アルジール氏の講演は大きく3部に分かれた。1)導入として日本とイスラーム、サウディアラビアとの関係史、2)両者関係発展の大きな要素となるアラビア語を教育する、アラブ・イスラーム学院の活動についての紹介、3)最後にこの活動における将来的な可能性についてである。
同氏によれば、日本とイスラーム世界の関係は1801年に明治天皇がオスマン帝国へ遣使を送ったことが初めであるという。サウディアラビアと日本の関係も、19世紀初頭くらいから始まっており、1909年には日本人最初のマッカ巡礼となる山岡光太郎の旅行も行なわれている。また、政治的には1960年になってジェッダに日本大使館が開設され、両国関係を発展させることとなった。経済面では、特に商業関係が発展したが、1976年から技術協力機関としてサウディアラビアにJICAが開設されている。
アルジール氏は、そのような両国関係のさらなる発展のためには、媒体となる言語というものが大きな役割を占めると述べた。そうした中でアラブ・イスラーム学院は、1982年サウディアラビアから「日本への贈り物」として国王自身によってその創設がよびかけられた。現在では、2年間を1コース(レベル1から 4まで)とした昼間クラス(1年間で週20時間の授業を15週実施)、短期集中のインテンシブコースなどを設けて、「生き生きとした」アラビア語の習得を目的として教育に取り組んでいる。また、近年インターネット上でアラブ・イスラーム文化、アラビア語教育に関する情報を配信するeラーニングにも力を入れている。この他にアラビア語の教育的出版物の発行、図書館の充実をはかり、学院の学生だけでなく在日アラブ人の子弟の教育にも配慮をするほか、学院外でのセミナーやシンポジウムなどでアラブ・イスラーム文化を広く宣伝する活動も行なっている。
アルジール氏は、こうした同学院の活動歴をふまえ、アラビア語教育の発展に関する将来的提言として「日本アラビア語学会(または協会)」の発足、大学等高等教育機関での「日本におけるアラビア語教育」会議の開催をよびかけ、講演をしめくくった。
コメンテーターとしてサミール・ヌーハ氏は、同じく日本におけるアラビア語教育に携わる立場から、同教育における将来的な抱負を述べた。
およそ60人以上の聴衆が来場し、アラビア語を習得する際の注意やアドバイスの求めにアルジール氏が丁寧に回答するなど、活発な質疑応答がみられた。

(COE研究指導員 中村明日香)
当日配布のプログラム
『2005年度 研究成果報告書』p.585-592より抜粋